小児科 すこやかアレルギークリニック

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負荷試験に想う
2011年03月10日 更新

今月7日から「食物負荷試験」を再開しています。

「待ってました」とばかりにかなり多くの予約を頂いているようです。今はちょうど年度末に当たり、食物アレルギーの診断書の提出を求められる時期です。中には食物アレルギーの時だけは当院を受診される方もいらっしゃいます。そのため、3月中は予約がとりにくい状態になっています。申し訳なく思っています。

一般的に「食物負荷試験」は全国的にみても、開業医はほとんど行っていません。では専門病院だけのものかと言われると、答はノーでしょう。当院ではこの1年間で300件を超えました。

この300件という数は多いか少ないかは、よく分かりません。全国的に超有名な食物アレルギーの専門病院は、年間500件以上の負荷試験を行っています。ただ、小児科医が何人もいて、他の医師が外来診療をやる一方で、負荷試験をやっています。

開業医は、一人しかおらず、外来診療と同時並行に行っています。1月中からインフルエンザの流行につき、1ヶ月半程は負荷試験を休止せざるを得ませんでした。そういう意味では、“それなり”のペースと言えるのかもしれません。

いや、別に数は競うつもりはありません。何でもかんでも負荷を行い、患者さんを危険な目に遭わせるつもりはありません。私も、負ける喧嘩はしたくないので、勝算の高い場合に行っています。

負荷試験を何度もこなしていると「これは行けそう」と言うのがだいたい分かります。以前、卵白がアレルギー検査のクラス6という最強の値のお子さんに「これは行けそう」と卵焼きを食べて頂きました。大抵の親御さん、小児科医が「クレイジーだ」と思うでしょうが、あっさりと食べられました。これは例外的ではありますが、こんなこともあるのです。

数値だけを気にしていれば、食物アレルギーの専門医でなければ、その後も長期間に渡り、卵の加工品も含め、「食べても良い」という許可は得られなかっただろうと思っています。ほとんどの小児科医が、卵の完全除去を指示しているようなケースです。親御さんからしてみれば、微量に卵を含むビスケットやパンさえも食べられずに、食品の原材料表示をにらめっこしている毎日と、何も気にせず育ち盛りのお子さんにモリモリと食べさせる毎日でどれだけのエネルギーの差があるでしょうか?。

よく書いていますが、医師が「食べてはいけない」という理由は、患者さんをアナフィラキシーなどの危険な状況に遭わせないようにするという意図があるでしょうが、その反面、オーバーに除去しているので何も起きません。きつい指示をしておけば症状は起こしませんし、責任を追及される恐れもありません。自分の身を守るという意味合いもあると思います。

先程の卵白の数値が6のお子さんは、私も薮から棒に負荷試験をやっている訳ではなく、「クラス6であっても、加工品くらいは食べられるのでは?」と思い、恐る恐る医院で加工品の負荷試験を行ってみて、食べられることを確認していました。つまり、外堀を埋めてあったのです。その結果として、卵焼きが食べられることが分かりました。

最近の医療は、リスクを嫌い過ぎる傾向にあるように感じています。食物負荷試験は、アレルゲンを食べさせる訳ですから、当然アナフィラキシーというリスクを伴います。この患者さんに限りませんが、親御さんが卵を除去し続けるリスク(ご苦労、ストレスなど)と負荷試験で私の被るリスクを秤にかけ、多少のリスクを私がかぶっても、患者さん側のリスクを減らせればと思い、卵焼きの負荷試験を決行しました。

よく匠の技、なんて言います。さまざまな技があると思いますが、その道の技術を習得するのに10年かかるなんて言われています。私の場合も負荷試験歴10年を超えています。医療にはエビデンス(医学的根拠)が必要とされますが、この辺は経験と勘がものをいうのかもしれません。

私も自分の身がかわいいです。ただし、自分かわいさに間違った食事指導は、なるべくしたくはないと思っています。自分で言うのも何ですが、負荷試験をやる医師は、正義感が強いのだと思います。医療はいまだに、自分を犠牲にしてでも、患者さんに尽くす部分が大きいと考えており、負荷試験をせず、「あれもダメ、これもダメ」と指示されているケースをみていると、「患者さんを犠牲にしている」と思ってしまうのです。自分を守るのではなく、患者さんを守るべきです。

冒頭に述べたように、開業医が一人ですので、毎日のように大勢の患者さんの診療をした上で、予防接種も、乳児検診もこなしています。その上でリスクを伴う負荷試験を行っています。結構ハードです。それでも充実した日々を送れていると思います。

医師にはいろんな人がいます。開業医は、経営者でもあるので、診療の方針は各院長が決めています。その結果として、食物負荷試験を行わない方針なのでしょう。それはそれで分かります。それなれば、食物アレルギーの患者さんを診た時に、食べられるものは食べさせてあげたいから、「食物負荷試験をやっているところに紹介しよう」と思わないのは、なぜだろうか?と思ってしまいます。中には、あからさまに患者を手放さない方針の医院さんも存在するようです。

変な言い方になりますが、食物アレルギーに関しても、医院の“当たりハズレ”はあります。ハズレなら、アレルギー検査のみで食べられる・食べられないと判断され、負荷試験の存在も知らされずに、アレルゲンを除去しつづけるに指示されます。専門医に紹介されることはまずありません。

アレルギーは全般にそうですが、小児科の方針が大きく異なります。当然、患者さんの症状には大きな差が生じてきます。例えばぜんそくなら、“風邪”と診断され、ぜんそくに効果のない風邪薬を処方され、症状が改善しない状況を繰り返すか、ぜんそくと正しく診断され、適切な治療により症状が速やかに改善するという具合です。

ぜんそくなら、症状が改善すれば、他のお子さんと全く同じような生活を送ることができます。食物アレルギーは、調子の良い悪いに関係なく、毎日3食、さらにおやつと除去をひたすら続けるか、続ける必要がないかと、もの凄く大きな差が生じてきます。

専門でない先生には、その差がいかに大きいかを理解して欲しいのですが、それでも紹介したがらない医師も存在しますので、患者さんが医師任せではなく、問題意識を持って主治医を替えるなど能動的に動かなければいけないのだろうと思っています。

私が食物アレルギーにこだわっているからかもしれませんが、食物負荷試験のことを知っていて、できる医師に紹介しない医師が、自分を犠牲にしてでもという信条で医療に取り組んでいるのだろうかと思ってしまいます。

いずれにしても、医師の方針が大きく異なる病気のひとつに、食物アレルギーが挙げられることを理解して頂けるよう啓発活動を続けていきたいと思っています。