小児科 すこやかアレルギークリニック

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百聞は一見にしかず
2011年05月19日 更新

昨日の午後は、「屋外診療」がありました。

私の診ているぜんそくの患者さんで、結構重症な子もいます。ぜんそくが重症だと、「運動誘発ぜんそく」がみられることが多いと思います。

文字通り、運動するとゼーゼー言ったり、咳き込んだりするのです。大人になるとあまり運動はしませんが、子どもは体育の授業があったり、園児なら走り回るのが仕事みたいなものですから、運動した状態も含めて、症状を出なくするのがプロだと思っています。

医師によっては、運動を禁じている小児科医もいると思います。運動を禁じるのは簡単ですが、何も解決していないのです。運動欲求の強い子どもに、運動をダメというのは簡単に言うべき言葉ではないと思っています。

そのお子さんは、話によると、散歩で駆けたりする程度でもチアノーゼが出て、じきに歩けなくなるくらいの呼吸困難になるのだそうです。そんなことから、保育園では散歩も禁じられているそうです。以前は、散歩に連れていくようサポートがあったそうなのですが、この春から園の方針が変わったせいで、散歩やいろんなイベントへの参加を禁じられ、親御さんも困り果てていました。

私にとって、にわかに信じ難いことでした。ただ、親御さんからの情報ですから、呼吸困難が起きているのは事実なんだろうとは思っていました。ただ、様々なイベントへの参加を禁じるのもちょっとどうかなと思っていたので、「何とかしなければならない」と考えていました。

そこで、ある方法を思いつきました。仕事が半日の日に、患者さんと医院の近くの歩道を一緒に歩き、呼吸困難が起こるかどうかを確認すればいいのです。「百聞は一見にしかず」の言葉通り、私もそこまでの症状を起こすのか?と思っていましたので、それしか方法はないのです。

持参したのは、聴診器と経皮酸素濃度計です。聴診器は、ゼーゼー言わないかと確認するもので、経皮酸素濃度計は、指にセンサーを取り付けると、体の中にどれくらいの酸素が取り込まれているか調べることができます。運動誘発ぜんそくが起こり、チアノーゼが出るくらいなら、運動前よりも酸素の取り込みは落ちるはずです。

当日は、天候にも恵まれ、暑すぎもせず、絶好の散歩日和でした。福岡の専門病院にいる時にも「運動負荷試験」をやったことがあります。病院内でベルトコンベアーの上を走る、もしくは自転車をこぐという形で運動負荷をかけ、肺機能が落ちないかどうかを調べる方法です。当院には、そういった機械はないので、医院の近くの歩道を歩いて頂くことにしました。万が一、チアノーゼを起こしても、すぐに医院に戻れるように、300メートルくらいのコースを往復することにしました。

そのコースを歩いて頂き、途中聴診と酸素濃度を測ります。思ったより元気に歩き、途中走ったりもしてみました。当院が日頃からやっている食物アレルギー児への「食物負荷試験」と同じ心境です。場合によっては、強いアレルギー症状が出るので、慎重にやらなければならないのです。

最初は何が起きるか分からない訳ですが、何も起きないと「意外といけるかも」と自信が湧いてきます。聴診上も異常なく、酸素濃度もスタート時の98%から下がる気配もありません。

結局、距離にして3キロほど、途中、水分補給も含め腰掛ける程度の休憩を取りましたが、1時間くらい歩きました。親御さんや園の先生の言われるような症状は一切出ませんでした。時折「疲れた」と歩くのを止めたこともありましたが、それは苦しくなった訳ではなく、10秒くらいして、また元気に歩き出します。親御さんが想像する以上に歩けることが分かりました。

「たまたま起きなかっただけ」と言われないよう、かなりの時間と距離を歩きました。何らかの症状が出ることを覚悟していたのですが、顔色が悪くなり、歩けなくなるという“ふれこみ”は何だったのだろうと思います。今回の情報をもとに、園側も厳しい運動制限を解除してもらえるよう希望します。

子どもは好きで病気になった訳ではなく、何かあったら困るから、何もさせられない、とするのはお子さんがかわいそうです。結局のところ、「食物負荷試験」と全く同じことが言えます。可能性ばかり考えて、運動や食事を何もさせないのは子どもにとって不幸なことです。

まだ不安定なぜんそくの症状を更に落ち着かせることも大切ですが、今回の“試験”がきっかけになり、この患者さんが子どもらしい日常を取り戻せることを願っています。