先日、中越の某市から患者さんが受診されました。
当院までは70キロくらい離れているので、女性の運転では大変だったと思います。先月は180キロの距離を3時間かけて受診して下さった患者さんがおりましたが…。
かかりつけのある小児科で食物アレルギーと診断され、説明を受けてもよく分からなかったので、「食物アレルギーなら○○医院かな」と考え、別の小児科に通院するようになったそうです。
最初の医院さんとは違い、アレルギー検査だけでなく、皮膚テストも実施されておりました。当院を受診された時に、話を少し聞いただけで「この人、勉強しているな」というのはすぐに分かりました。私の恩師が書かれた「ホップステップ食物アレルギー」という本を薦められ、知識を貯えられたようです。
いつも言っているように、アレルギー検査は参考にしていますが、それだけで食べられる・食べられないの判断は一切できません。先に述べた皮膚テストは、そのアレルゲンに対する過敏性を反映しており、大きく腫れれば、食べると症状が出る可能性が高まります。
ただ、厚生労働省の食物アレルギーに関する研究で、アレルギー検査の陽性率が80数%あり、皮膚テストも80数%が陽性だったのに、実際に食べさせてみたら40数%しか症状が出なかったというデータがあります。皮膚テストも疑陽性といって、腫れても食べて何ともないなんてことがあるのです。
これは仕方のないことですが、2番目の先生からいろいろと指導してもらったのですが、「食物負荷試験」をやられていないので、いざ食べられるかどうかとなった時に、答えが出なかったのです。若干気の毒な気もしますが、「結局“中途半端”だったので「食物負荷試験」を目的に(当院を)受診しました」とおっしゃっていました。
食物アレルギーのガイドラインによると、「食物負荷試験」の実施状況を調べた実態調査が行われており、今日はそのデータに触れてみたいと思います。
アレルギー専門医に、アンケート調査をしたところ、回収率が64%だったそうです。その回答の中で1回でも「食物負荷試験」を1年間にやった医師は50%未満でした。「食物負荷試験」をやっていても、年間50件以上やっているのは15%に満たなかったそうです。
額面通りにみてみると、アレルギー専門医なら半分弱の確率で「食物負荷試験」をやっているように思えますが、アンケートの回収率が64%しかありません。アンケートに答えなかった36%の医師が負荷試験をやっていなければ、「食物負荷試験」をやっている医師は更に減ることになります。その上、年間50件以上とそれなりに負荷試験をやっている専門医の割合も1割に満たない結果になってしまうかもしれません。この研究は、負荷試験に関心のある医師が回答したと思われ、その可能性は高いと思っています。
私の勉強させて頂いた福岡病院で学んだ先生達は「食物負荷試験」をやっていることが多く、他に神奈川や愛知県など専門病院のあるところでは、そこで学んだ先生方がそれぞれ負荷試験をやっていると思うので、負荷試験をやっている医療機関は多くなります。一方、新潟県ではそれがないので、都道府県間の地域格差が大きいことが分かります。
当院も「食物負荷試験」をこだわってやっています。年間で300件以上はやっていますが、今回触れた患者さんのように、遠くからでも救いを求めて受診して下さいますので、ある程度は食物アレルギーで困っている患者さんの支えになっているのかもしれません。ただし、現状に満足はしていません。
近隣の開業医さんからの紹介はまずありません。多分、患者さんは検査結果だけで食べられないと説明され、食べられるかもしれないものを諦めているのだと思います。70キロやそれ以上離れたところから受診があるのに、それに比べ至近距離で「食物負荷試験」をいつでも受けられるお子さんが、受けられずにいる状況を理不尽に思うのです。
各医師が「食物負荷試験」という方法があることを患者さんに伝えてくれればいいのですが、今回の中越からの患者さんもそうですが、伝えられていませんでした。でも薦められた本には負荷試験のことが書いてあるのです。
まだまだ医療は開かれたものにはなっておらず、患者さんに優しいとは思えません。食物アレルギーへの関心が医療関係者の間でも低く、それがもろに患者さんに反映していると言わざるを得ないのです。当面は、せめて地元だけでもレベルを上げなければなりません。
昨日の話ではないですが、特に食物アレルギーに関しては、当たりの極めて少ない「くじ引き」なのではないかと思ってしまいます。と同時に、当院のやっていることが“当たり”になれるよう、引き続き努力していかなければいけないと考えています。


