小児科 すこやかアレルギークリニック

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逆のパターン
2011年06月01日 更新

子どもが小児科を受診すると、医師は問診をして、診察に入ります。

聴診器を胸と背中に当てて、その後「あーん」と言ってのどを診ます。あとは症状によってはベットに寝てもらいお腹を触ったり、皮膚の湿疹を診たり、中耳炎を疑ったら「耳鏡」という器具を使って鼓膜を観察します。

聴診は、心臓の音を聞くのと肺の音を聞くのが目的です。

先日、内科検診で心雑音を指摘されたというお子さんが受診して、心臓の音を入念に聞いてみました。

心臓はもともとポンプの働きをしており、しかも子どもは胸が薄いので“メカニカルノイズ”が聞こえやすいのです。これを無害性心雑音と言ったりします。このお子さんの場合も、「これは病的な音じゃないな」と思ったのですが、親御さんも心配しており、念のため、病院で精査をお願いしました。一度エコーで心臓の形をみておけば、来年以降また心雑音を指摘されても、「異常なし」と言えるからです。

日頃の診療では、心臓の異常音が問題になることはあまりなく、子どもは呼吸器感染も起こしやすいため、またぜんそくのお子さんも少なくないため、肺の聴診が大事になると思います。

私がより入念に音を聞く場合は、咳が長引いている時です。咳が長引けば、これまで指摘されていなくてもぜんそくが隠れていることもあり、気管支炎や肺炎が見つかる場合もあります。まあ、ぜんそくがあっても、ぜんそくは夜から朝に悪化しやすいため、外来をやっている日中はゼーゼーという音が聞こえないことも多いので、実はアレルギーや呼吸器にこだわって診療していても、診療中に異常音が聞こえることは少ないのです。

先日、小児科の医院さんに通っても咳が良くならないというお子さんが当院を受診されました。前医で「キプレス」というぜんそくの薬が処方されていました。親御さんに説明はありませんでしたが、これだけみると、ぜんそくを想定して治療しているのは明らかです。

ぜんそくは、いきなり発作を起こすことはまずなく、“布石”があります。布石と言うのは、風邪を引くと咳だけ長引いたり、ゼーゼー聞こえたりというように、ぜんそくの時に見られやすい症状を過去に繰り返していることが多いのです。

ただ、このお子さんに限っては、そんなことは過去にみられませんでした。つまり、ぜんそくでない可能性が極めて高いことになります。何故ぜんそくの薬が出されていたのだろうと不思議に思いました。

「何とか早く症状を改善させたい」と願っての処方なら分からなくもないのですが、「咳が長引いているんだから、どうせぜんそくだろう」なんて考えで処方しているのなら反対です。咳が長引いている時に、私も似たような薬を出すことがありますが、かなりの確率で効果が期待できると確信して出していますし、処方する根拠を親御さんには説明しています。

また、ぜんそくの薬が出ていて、症状が改善していないのだから、「やっぱりぜんそくじゃないんだろう」と思いました。そういう考え方も大事になります。

あとは、のどの奥に鼻が落ちていて、それが長引く咳の原因になることもありますし、肺に異常な音がしないかを確認することになります。

聴診器を背中に当てた途端、気付きました。「あっ、変な音がする」と。

変な音と書くと素人っぽいのですが、肺炎や気管支炎の時によく聞かれる音が聞こえました。いつから聞こえていたのか分かりませんが、前の医師が聞いた時は聞こえなかったのか、ちょっと聞いたくらいでは気付かなかったのかもしれません。長引く咳の経過中に、一度も熱がなかったので、はなから「肺炎、気管支炎はないな」と思っていたのかもしれません。

マイコプラズマやクラミジアなどだと高熱が続くこともありますが、熱がさして出ないこともあります。肺炎疑いで胸のレントゲンを撮ってみました。明らかな陰影は認めず、気管支炎と診断しました。

ぜんそくはないと思いましたので、キプレスは中止し、こういうケースで有効な抗生剤に切り替えさせて頂きました。一週間後受診して頂きましたが、予想通りかなり症状は改善していました。親御さんもキプレスを飲んでいる時には改善が感じされなかったのに、明らかな改善を実感して下さっていました。

こういう時は、前医で良くなっておらず、期待されて当院を受診される訳ですから、「是が非でも何とかしなければ」とややプレッシャーがかかります。アレルギーだけでなく、呼吸器にもこだわっているつもりですので、“任務遂行”という感じです。

この患者さんは、聴診が最大のヒントになった訳ですが、これも医師によって聞き逃したりすることもあると思います。福岡の病院でトレーニングを受けたおかげで、微妙な音も聞き逃しにくくなっていると思います。必要なら深呼吸をしてもらい、時間をかけて聞いてみて、異常な音の発見に努めています。

上越でよくあるパターンは、ぜんそくなのに“風邪”とか“気管支炎”、“マイコプラズマ”と間違って診断されている場合で、いわゆる「過小治療」を問題視していますが、今回は、ぜんそくでないのにぜんそくと診断され、「過剰治療」されていました。

やはり、小児科医の基本である「聴診」を軽んじてはいけないと改めて思わされました。