当院はアレルギーを専門にしていますが、私自身はその前に小児科専門医の資格も持っています。
私を頼って下さる患者さんには、自分の知識を駆使して健康を回復して欲しいと願っています。それはアレルギーでも、アレルギーでなくてもです。
先日、赤ちゃんの診察をしていて、心雑音に気付きました。初診ではないので、以前は聞き逃していたのだろうと思いますが、明らかに何か異常のありそうな雑音がしました。心臓の検査はエコーで診てもらうのが一番です。
当院にはエコーは置いておらず、仮にあっても診断を確定できるかどうか分からないので、心臓の専門医の先生に紹介状を書きました。つい先日、返事を頂き、その診断は「動脈管開存症」であり、程度も軽く、基本的には経過観察でよいということでした。私もホッとしました。
自分のできないこと、自信のないことは他の専門医に相談することで、患者さんにとっては“より良いこと”ができたと思っています。今回はこの「心雑音」を解決できたと思っています。逆に、一人で完璧にこなせる小児科医はいないので、“連携”なくして、よい医療は不可能だと思っています。
この前、卵ボーロを食べて、顔が赤くなったという赤ちゃんが当院を初めて受診されました。実は、この症状が出て、近くの医院さんを受診したそうですが、アレルギー検査を薦められ、採血を試みたものの、充分量採血できなかったのだそうです。小さな赤ちゃんでもあり、こういうことは時として起こり得るので、致し方ないと思っています。
ただ、卵アレルギーを疑った場合、アレルギー検査で卵に弱そうかどうかを判断するので、このままではちょっと困ると思います。それでどうなったかと言うと、来年の8月まで卵を一切食べないように指導されたそうです。
お母さんはその話を聞いて、その説明に疑問に感じ、当院を受診されました。こういう説明を聞いて、「お医者さんが言うんだから、その指示に従おう」と思う方が多いとは思いますが、そう思わない人もいるのだと思います。
疑問に思うとしたら、「本当に卵が悪いのか?」、「何故に来年の8月までか?」、さらに「卵を微量に含むものまで除去しなければならないのか?」ということでしょうか?。
私なら、採血できなかったことを謝り、必要な検査であることを伝え、時を改めて採血させて頂くか、私がアレルギーの専門医でなければ、専門医に紹介しただろうと思います。
来年の8月と言うと、1年2ヶ月ということになりますが、その間に卵を一切食べられない辛さは本人やご家族にしか分からないことだと思います。必要のない除去をすべきでないし、ましてや成長期の赤ちゃんです。また、夜泣きだなんだと親御さんにもストレスはかかる時期です。必要のないストレスをかけるのは避けるべきです。
先ほど挙げた3つの項目を私ならどう判断するかですが、「本当に卵が悪いのか?」についてですが、可能性はあると思います。卵アレルギーの頻度は食物アレルギーの中では最多です。食べてまもなく発赤という症状が出ていますので、充分に疑えると思います。
やはりアレルギー検査で、卵白が陽性なのを確認したいのと、私であれば、卵で皮膚テストを行うと思います。アレルギー検査と皮膚テストの両方で陽性であれば、除去と判断するのは正しいと思います。
次に「何故に来年の8月までか?」については、残念ながら根拠のないことです。どうして来年の8月なのか根拠をお聞きしたいくらいです。それに対する説明はなかったようです。それがお母さんにとって、引っかかったことだそうです。周囲にこの疑問を解決してくれそうなところを聞いてみて、当院を受診されたと伺いました。
3番目の「卵を微量に含むものまで除去しなければならないのか?」についても、根拠はないと思います。乳児期はあまり積極的に「食物負荷試験」は行いませんが、1歳を過ぎるといろいろなものを口にする機会も増えるでしょうし、場合によっては幼稚園に預けることもあるでしょう。園での給食にも配慮しないといけません。
やはり医師は根拠のないことをあまりすべきではないし、ましてや患者さんにバレバレのことは言うべきではないでしょう。あからさまなことは、逆に医師としての評判を落としかねません。今回は、これまでの経験の中で、その先生なりの根拠があるのかもしれませんが、少なくとも食物アレルギーのガイドラインには、そのようなことは書かれていないと思います。
その先生なりに一生懸命なのかもしれませんが、ガイドラインから逸れており、今回の患者さんに対し、全力を尽くした結果の指導とは思えないのです。もし、親御さんが疑問に思わず、こういう対応をママ友達に広め、それが広まってしまったら、上越の食物アレルギーの患者さんにも迷惑がかかるし、専門的医療を広めたいと思っている当院にとっても好ましいことではありません。
親御さんは必死なのに、医師は、敢えて言いますが、お茶を濁すような対応をしていることもあるように感じており、特にアレルギーは親御さんの医師の間の温度差がかなりあると思っています。
まず親御さん自身が、医師から全力を尽くしてもらっているという実感を持てるかどうかも大切なことだと思います。


