小児科 すこやかアレルギークリニック

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立場が変われば
2011年06月06日 更新

4日、5日と横浜で日本小児難治喘息•アレルギー疾患学会がありました。

今回は発表もなかったので、気は楽でした。日々の診療の中で、データをまとめたり、スライドを作るという発表準備はかなり労力がかかります。久々に、のびのびと学会を楽しめた気がします。

それにしても、金曜の診療が終わり、それから家に帰って支度をして、横浜の学会会場の近くのホテルにたどり着いたのは、4日の0時半でした。シッカリと参加し、5日の夕方に学会が終わってから、帰路につきましたが、家に着いたのは21時半でした。土曜の診療は休みましたが、体も頭もあまり休めなかったのが実情でしょう。

ただ、診療を休んでまで参加した訳ですが、収穫はありました。というか、収穫を得てこなければ、休んだ甲斐もないということになります。

学問的に収穫があったのですが、いろいろと考えさせられる点もありました。

来週、市内の小学校で食物アレルギーの講演をやることになっています。学校の先生方のみでなく、話を聞きたい希望者を募り、保護者の方にも声をかけて下さるそうです。

学校側の担当者の方の話ですと、かかりつけの小児科医から全く理論的でない食事制限を指導されている子ども達もいるようです。有り得ないような指導は、一昨日の話ではないですが、根絶させなければなりません。

学校の先生からすれば、一番興味のあることと言えば、「エピペン」のことではないかと思うのです。一応解説しておくと、食物アレルギーのあるお子さんのうち、過去にアナフィラキシーを起こしたことがあれば、「エピペン」という自己注射を携帯し、いつ起こるか分からない強いアレルギー症状に備えていなければなりません。

その「エピペン」はいざという時に注射できるのは、本人か家族、救急救命士なのですが、もし学校で強いアレルギー症状を起こした場合、低学年だったり、本人がぐったりしていれば、本人は打てず、親や救急車が到着するまでに時間がかかってしまうかもしれません。

特に重篤なアナフィラキシーショックの時は、30分以内に処置をしなければ、命が助からないこともあると言われています。手元にエピペンがあり、学校の先生しか打てる立場にない時に、打たないのは人道的責任が問われます。そういう観点から、学校の先生がエピペンを打っても良いということになっています。

私も実は「それは正しい」と思っていました。街ならば、30分以内に病院へ救急搬できるでしょうから、あまり問題にはならないでしょうが、郊外だと確実に30分以上はかかります。子ども達の命を救うためにも、学校の先生にそれはお願いしたいと思っていました。

今回の学会会場で養護教諭の先生の発表があった際に、学校側のアレルギーへの関心が低いのではないか?ということが話題になりました。

その時に、会場から発言があり、学校の先生は何かと忙しいため、アレルギーの対応に対する優先順位は低いだろうと指摘があり、関心を持ちたくてもなかなか関心を持てない現状があるのではないか?という意見が出ました。

昔よりは何かと求められる点も多く、アナフィラキシーショックはしょっちゅう起こることではなく、例えば、クラスにいわゆる発達障害とされる子どもがいたりすると、一層手がかかる可能性が高く、それどころではなくなる場合もあるというのです。

その時に、私はハッとさせられました。子どもの健康を守るために、「エピペンは打ってもらはないと。いや当然だ。」とさえ思っていたのですが、立場が変わると、他方面で忙しく、やりたくてもできない側面があるのだろうと気付かされました。

エピペンは、それこそ本来専門であらねばならない小児科医であっても、なかなか打てません。アナフィラキシーを起こしている患者さんが目の前にいると、よほど重症なら使うケースも増えるでしょうが、使えば速やかに症状が消失するケースでも、ステロイドの点滴を優先する医師が多いのが現状だと思います。

エピペンは筋肉注射ですが、予防接種などで針を刺し慣れている医師ならまだしも、それを一度もやったことのない学校の先生に求めるのは、酷なケースもあるのだろうと思いました。一方的に「打つのは義務だ」と押し付けるのではなく、学校側の立場も考えることが大切なのだろうと思っています。

ちなみに、親御さんや救急救命士がすぐに駆けつけられる状況では、学校の先生が打つ必要はなく、強いアレルギー症状で生命の危機的な状況でのみ、エピペンを打つことが求められているのです。

近々ある講演の中で、「是非とも打ってもらわないと困る」という言い方は避けようと思います。ただ、養護の先生の危機意識は高く、エピペンの投与について知りたいという機運が高まっているも事実でしょうから、食物アレルギーの最重症のケースではどういうことが起き、どういった状態で打ってもらいたいかということは話に盛り込もうと思っています。

過剰な除去など、食物アレルギーの対応への関心も少しずつ高まっており、そのために今回お声がかかったと思っています。エピペンだけでなく、上越の食物アレルギーを持った子ども達が無駄に除去や制限されることがなくなるよう、協力を求めてきたいと思っています。