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ぜんそく死ゼロ作戦
2011年06月07日 更新

今日も学会ネタでいこうと思います。

学会の中で、学校や園のアレルギーに対する関心が低い、という話も出ていましたが、それは小児科医であっても同じであることが指摘されていました。いまだにアレルギー専門の小児科医と、そうでない医師の指導が180度くらい話がズレていることもよくあります。

今回の学会で新潟県内の先生は、私の気付いた範囲で数人見かけました。地域別で分類すると下越3人、中越1~2人、上越0人でした。新潟県は小児アレルギーの分野は、全国レベルを下回っているのは事実だと思いますが、県内であっても地域のばらつきがあり、参加人数はそれを反映するかのようでした。

学会で多くを学んできましたが、印象深かったのは内科の先生が発表されたぜんそく死ゼロ作戦のお話でした。これは岐阜県の呼吸器内科の先生が、県内のある地域のぜんそく死をゼロにしようと奮闘されているという内容でした。

アレルギー専門医のぜんそくに関しての願いは、文字通り、ぜんそくによる死亡をゼロにすることです。現在は小児では年間数人と言うレベルまで下がっていますが、成人領域では年間確か2000人くらいはいるようです。

大人のぜんそくは、治りづらいのは事実でしょう。しかし、治療薬の進歩により治療はなかなか止められないけれど、治療している限りはほとんど呼吸困難発作を起こさずに日常生活を送ることができます。吸入ステロイド薬を欠かさず使用することがポイントになります。

その地域では、呼吸器内科で、アレルギー専門医はその先生だけだそうです。当然、地域のすべてのぜんそく患者さんを、その先生だけで対応することは不可能です。幸い、成人ぜんそくの場合は、専門医でなくても「吸入ステロイドを処方すれば良い」と広く知れ渡っています。その先生は、折角いい吸入薬が処方されていても、うまく吸えていない、治療を中断していることに着目されました。

ぜんそくはお年寄りにも少なくなく、吸入の仕方を覚えきれず、うまく吸えていなかったり、力強く吸うタイプの薬を吸えなかったりと、その患者さんに合った薬を出さなければいけないのに、それがなされていなかったりする場合が多々あるそうです。

その先生はご自分の患者さんにはキチンと指導していて、どのタイプの吸入薬が適しているかも考えて処方されていますが、専門の先生ばかりではないし、そこまで良心的にやっている先生も少ないため、薬剤師と連携しているそうです。つまり、地域の調剤薬局で処方された吸入薬を適切に吸えるように勉強会を行っているのです。

かなり本格的にやられていて、その地域でのぜんそく死はほぼゼロになっているそうです。素晴らしい試みです。その先生の熱意に感服しました。

地元の子どものぜんそく医療を振る返ってみると、医師のレベルの格差の大きさを感じざるを得ません。ぜんそくなのにぜんそくとすら診断されておらず、なぜかマイコプラズマなどの感染症と診断されていたりします。点滴を繰り返しているので、医院は利益が上がるかもしれませんが、患者さんの症状はまったく改善しないのです。

地元では「食物負荷試験」をやっているのは当院くらいだと思いますが、周囲の特に開業の先生からの紹介はなく、“孤軍奮闘”の状態が続いています。多分、これまでもずっとアレルギー検査だけで食べられる・食べられないの判断をされてきたので、別に専門医に紹介する必要性すら感じていないのだと思いますが、時代が進歩して積極的に「食物負荷試験」をして必要最小限の除去に抑える努力が必要になっていることにおそらく気付いていない先生もいるのだと思います。今までもそれで何とかなったから、これからもそれを続けていい訳ではないのです。

アトピー性皮膚炎も多くが診断が適切でなく、ステロイドの使用法もおかしな指導がなされていることが多いのです。ぜんそく、食物アレルギー、アトピー性皮膚炎と地域の患者さんを当院で全てはまかないきれません。課題が多すぎて身動きできないように感じていますが、今回の先生の講演の内容を参考に、何とかしていかなければと思っています。

市内の小学校で来週食物アレルギーの講演を依頼されていますが、いろんな意味でチャンスだと思うのです。

田舎ではまだ、名が通っていれば、そこに行けば間違いないと思われているようですが、残念ながらそうではないことを知って頂かなければならないようです。ぜんそく、アトピー、食物アレルギーはともに、それをもとに診療すればハイレベルな医療を提供できる「ガイドライン」が存在しますが、有名でもガイドラインとは大きくはずれた医療をやられている場合も目立ちます。まず上越の現状を知って頂くことから始めたいと思っています。

専門でない先生の手に余るようなケースさえも紹介されずにおり、私の持つ技術がもっと活かされないといけず、本当にもったいない話だと思います。私も地域で唯一の小児科のアレルギー専門医として、私のやるべきことは多いのだと思っています。