いつもアレルギーのことについて書いていますが、私自身はアレルギーの専門医でもありますが、基本は小児科の専門医でもあります。
日頃から心掛けていることは、根拠のある医療です。相手が小さな子どもですから、自分の利益をメインに考えると、とんでもないことになります。つまり、たいして必要のない検査や点滴をされたり、やたらと薬の種類が多かったりします。そうなると、基本からかなりブレた、歪んだものになってしまいます。
毎日診療をしていると、症状が改善しないために他院から移って来られる患者さんもいらっしゃいますが、正直言って、治療内容が理解しづらいものもあります。ウィルス感染には抗生剤の点滴は必要ないですが、繰り返されていたり、脱水になっていないのに点滴をされていたり、そもそも診断がキチンとなされていないこともあります。
乳児がゼーゼーすればRSウィルスを考えなければいけないのに、医院で簡単に検査できるのに調べられていなかったり、ロタウィルスは胃腸炎の“親分”で、かなり症状が強く出て、しかも感染力が強いのに、これも簡単に調べられるにもかかわらず、調べられていなかったり、アデノウィルスは細菌感染と間違われやすいのも事実ですが、抗生剤の点滴が繰り返されたりしています。
これらのウィルスは特効薬はないのですが、症状が強く出て入院の可能性もある病気です。なるべく診断を確定して、病気に関する情報や注意点を親御さんに知っておいてもらえば、不安も減らすことができることでしょう。診断が確定されずに、不安になって当院を受診されたりすることも少なくありません。
診断を確定するには、診察して一発で病名を見極められればよいのですが、検査が思いのほか陰性で、別の検査が新たに必要になったり、炎症反応を見るために採血させて頂くこともあります。そうなると、一人の患者さんで診察室に3~4回入って頂くケースさえあります。こんなやり方は効率いいかと言えば、効率的ではないでしょう。
開業医は往々にして効率を追求します。日本の医療は「3時間待ちの3分診療」と言われますが、結局診断もハッキリせず、待たされた割には、あまり症状も改善されなければ、それだけ待つ意味があるのだろうかと思ってしまいます。待ち時間が長いのなら、待っただけの収穫を持って帰って頂くべきでしょう。効率を追求し過ぎると、患者さんに優しい医療ではなくなってしまうと思っています。
タイトルの4500円とは、水ぼうそうの医療費で、ある医療機関で請求されたものです。
水ぼうそうは、インフルエンザの「タミフル」のように特効薬があります。「ゾビラックス」や「バルトレックス」というのですが、発症早期に飲めば症状を軽減できると言われています。ウィルス感染には、このような特効薬はほとんどないため、インフルエンザや水痘は例外と言えます。
そんなに有効な薬であれば、例えばお子さんがインフルエンザや水ぼうそうにかかった場合、兄弟にうつらないように予防的に使えないかという発想も生まれることでしょう。しかし、日本の保険診療では“予防投与”は基本的には認められておりません。
インフルエンザは、老人がかかると死亡することもあります。また、基礎疾患があると、リスクは高まります。ですから、こういった高齢者や基礎疾患のある患者さんは、タミフルやリレンザを予防的に使うことは例外として認められています。しかし、小児の場合は、私の知る限り、認められていません。
当院が開院してから、患者さんにインフルエンザの検査をして「インフルエンザでした」と親御さんに伝えると「家族全員分のタミフルも処方して下さい」と何度か言われたことがあります。「えっ?」と聞き返すと「○○医院さんでは出してもらっていました」と言うのです。
予防投与は認められていないことを伝えると、渋々といった感じで承知して下さいます。真面目に医療していてガッカリされる程、理不尽なことはないと思います。敢えて言いますが、理由があるのでしょうが、ルール通りでない独特な医療はどうかと思っています。
先日、ある患者さんが発疹が出たと当院を受診されました。水ぼうそうを疑っているようです。先月、兄弟が水ぼうそうと診断され治療を受けたそうです。実は、この患者さんは「うつるだろうから、予防した方がいい」と勧められ、予防の薬が処方されたそうです。
それで4500円が請求されたのです。普通に診療を受けると530円のはずですが、何故か?。「自由診療」として扱われたのです。保険外診療とも言います。水ぼうそうの薬は結構高いようで、それで高額の請求につながったようです。
私なら、上のお子さんが水痘にかかった時に、「下の子にうつる可能性はあります。潜伏期間は2週間くらいだから、その頃に皮膚に水ぶくれができてこないか注意して、出たら早めに受診して下さい。」と伝えたと思います。下のお子さんは、基礎疾患がある訳でもなく、水ぶくれが出てから治療を開始しても、特効薬があるので治療が遅れて、重症化するとは思えないのです。そして何より、530円で済みます。
患者さんは、医師から言われれば、だいたい「ハイ」としか言えないと思います。何故4500円かかる医療を勧めたのか私にはよく分かりませんが、多くの小児科医がやらない方法だと思います。
インフルエンザだけでなく、水ぼうそうも「○○医院さんでは出してもらった」からと予防投与を求められたことがあります。それも丁重にお断りしましたが、それがスタンダードな方法だと思ってもらったら困ります。
保険診療に沿った治療が標準的な治療法であり、独特な医療だと余計にお金がかかったりします。余計な出費を求めるような治療は避けるべきでしょう。
いつもは、この場で「アレルギーのガイドライン通りの標準治療を」と言っています。保険診療の範囲なので、患者さんの財布にも優しく、そして有効性も高いのです。感染症であっても、実は同じことが言えます。
一部ですが、かなり独特な医療が行なわれているようで、他にもぜんそく発作を起こした患者さんに、1日2回受診させて点滴を1週間も続けるような治療はガイドラインには一言も書かれていません。これも医院には有利となるでしょうが、患者さんには有利とは思えない対応です。
独特な医療を減らし、地元に標準的な治療を広く知って頂き、それを広めていかなければならないと思っています。


