以前も触れましたが、「茶のしずく石けん」で強いアレルギー症状を起こした患者さんが相次ぎ、製品の自主回収となっています。
ネットニュースによると、こんな患者さんもいたようです。40代女性で、スパゲッティを食べて、歩いて買い物に出掛けた直後に、全身に蕁麻疹が出て、目の前が真っ白になったそうです。救急車で病院に搬送され、小麦によるアナフィラキシーと診断されました。
普段から食べてる小麦製品を食べて、歩いただけで全身性のアレルギー症状が出ています。ご本人は何が起きたか全く分からなかったでしょうし、相当辛い思いをされただろうと思います。
実は、2年前から使い始めた「茶のしずく石けん」が原因だったとは、予想だにしなかったでしょう。私の聞いている話では、以前から小麦を食べている大人が急に食べられなくなったので、当初はアレルギー専門医であっても、おかしいことは分かっても、メカニズムまでは分かっていなかったようです。
食物アレルギーということになるのですが、普通はこれまで食べていた小麦製品で急に症状が出るのは違和感を覚えますし、確かに大人になって小麦が原因で「食物依存性運動誘発アナフィラキシー」を起こすことは有り得ます。文字通り、食品を食べて、運動することで強いアレルギー症状を起こすという病態です。食べても運動しなければ、食べなければ運動してもアレルギーは起こしません。性差もあり、通常のものは男性が多いのですが、今回の件は圧倒的に女性が多かったのです。
最近は、「経皮感作」が話題になっていました。つまり、小麦も卵や乳製品も人体にとっては異種のタンパク質です。でも普通はヒトは何事もなく、食べて栄養にしています。冷静に考えると、異質のものが体に入る訳ですから、拒絶反応を起こしてもおかしくないのです。つまり、口から入るものに関しては、拒絶反応を起こさないようにできているのです。
一方、アトピー性皮膚炎などで皮膚が荒れていると、そこから食物が入ることで、その食品に対し苦手な体質になってしまうというのです。こういう理論が注目されている最中に、「茶のしずく石けん」の問題が持ち上がったのです。
「茶のしずく石けん」には泡立ちが良いように小麦成分が含まれていました。石けんで毎日のように顔を洗うことで、微量ながら皮膚から小麦成分が取り込まれ、小麦アレルギーを発症してしまったと考えられています。
アレルギー専門医なら、「経皮感作」が注目されているところだったので、「あぁ、やっぱりか」と思うと思うのです。今回の患者さんは、20~50代の女性が多く、相談するとなると内科医が多いのだろうと思っています。内科医は食物アレルギーはあまり診ることはないでしょうから、アナフィラキシーを起こせば分かりやすいものの、石けんを使うと蕁麻疹が出る程度の局所症状なら、これが食物アレルギーで起きているとは考えもしないだろうと思います。
当初は患者さんは67名と報告されていましたが、自主回収となり、ニュース等で大きく取り上げられたことで、認知が広まりました。当院で診ているお子さんのお母さんも愛用者で、製造元の悠香という会社から回収の旨の手紙が届いたそうです。先日のニュースでは、650件の相談があり、そのうち体に被害を受けたという訴えは250件に跳ね上がったそうです。その2割が全身性のアレルギー症状が見られたといいます。
250件のすべてが小麦アレルギーと言い切れるのかどうか分かりませんが、有名女優さんをCMに起用し、愛用者も多かったと聞いています。もっと出てくるものと思われます。知らずに使用し続け、アレルギー症状を起こす患者さんがこれ以上出ないことを願っています。
別の30代の患者さんで、自動車の運転中に突然全身が痒くなって意識が遠のき、救急車で病院に搬送されました。この方も茶のしずく石けんを1年3ヶ月に渡り使用していたそうですが、別の病院で同石けんによる小麦アレルギーと診断されたそうです。つまり、最初の病院では、小麦アレルギーとは診断できなかったことになります。
今回、大人での患者さんがほとんどな訳ですが、本来食物アレルギーは子どもに多い病気です。便乗するようで悪いのですが、食物アレルギーは全身症状を起こし得る怖い病気であることが認知され、特に重症な場合は、非専門医ではなく、なるべくアレルギー専門の小児科医のもとで診療を受けることが推奨されるようになればいいと思っています。


