食物アレルギーの診療において不可欠なのが「食物負荷試験」と言われています。しかし、全くと言っていい程、普及していません。
「食物負荷試験」のことを知らない小児科医は、まずいないと思います。医師は、患者さんにベストを尽くすべきと言っていますが、もし医師全員がベストを尽くしたら、どこの病院や医院に行っても同じような診断、治療になるはずです。
食物アレルギーに関しては、「負荷試験をやりましょう」とか「負荷試験をやっている先生を紹介します」とならなければおかしいのです。そうなっていない現実は、“医師がベストを尽くしていないから”と言えるのだろうと思います。
ぜんそくやアトピー性皮膚炎の診断も正しくないことが多いのですが、食物アレルギーに関しては、患者さんの成長にもかかわるし、親御さんは「アレも食べられない、コレも食べられない」と悩んでおり、1日三食どういうものを食べさせようとばかり考えておられると思います。
ぜんそくやアトピーは病気の状態が悪ければ辛いですが、症状が落ち着いていれば、他の病気のない子とを区別はつきません。食物アレルギーがあると、親御さんは24時間、365日ストレスを抱えていると言えましょう。
そんなこともあり、食物アレルギーの患者さんや親御さんの現状を改善させたいと、この場でいろいろ書いているのです。しかし、周囲ではこれまで通り「2歳まで除去しなさい」という確率論的な指導が行なわれています。
ぜんそくやアトピーで困っているお子さんも多いのですが、せめて食物アレルギーの患者さんだけは、もう少し良心的になって紹介するなりして欲しいと思っています。もちろん病気の重さは患者さんによって変わり、2歳前に食べられる子もいれば、小学校に上がっても食べられない子もいます。「2歳まで」という医学的根拠は薄いと言わざるを得ません。
先日、多抗原陽性の患者さんが当院を初診されました。近医でアレルギー検査をやられていましたが、負荷試験で評価されることもなく、卵、乳製品、小麦を除去されていました。
小麦の値も高かったのですが、小麦は主食ですので、しかもビスケットやクッキーにも含まれ、おやつとしても重要です。小麦は検査が高くても、食べられることもあり、食物負荷試験でシロクロをつけることになりました。
結果は、陽性。つまり、負荷試験の最中にアレルギー症状が出てしまい、小麦の除去は継続せざるを得ない、という結果になりました。当然、親御さんも「まだ食べられない」という現実を突きつけられた格好になります。
中には、負荷試験の必要性は分かるのだけど、アレルギー症状を目の当たりにすると、「少し間をおきたい」という方もいらっしゃいます。当然、親御さんの気持ちも配慮する必要がありますが、私は「次回は何としてもリベンジして、自信を持って欲しい」と思っています。特に多抗原陽性の場合は、ひとつがダメでも、他の食品は大丈夫であることもあるのです。
小麦が難しいと分かった時に、親御さんの気持ちを確認し、今度は乳製品で負荷試験をしましょうという予定になっていました。私としては「今度は絶対に失敗できない」と思ってしまいます。正直、少し追い込まれた気持ちになっています。
つい先日、ヨーグルトを使った負荷試験を行ないました。負荷試験は少しずつ量を増やして食べてもらうのですが、診療の合間に、次はどれくらいの量を負荷するか決めながら進めていきます。診療しながら、「上手くいってくれ」と祈るような気持ちになっています。
結果は、明らかなアレルギー症状は誘発されませんでした。リベンジは達成されました。乳製品の中で、ヨーグルトといえばかなり強い部類になります。これが食べられるということは、乳製品のほとんどは除去する必要がないということになります。
まだ卵もどれくらい食べられるか、負荷試験の必要がありますが、アレルギー検査の値も高く、実際にどうなるかはよく分かりません。私の頭は、もう卵に向いていますが、とりあえずは乳製品の除去の必要性はかなり小さくなり、安堵はしています。
負荷試験が上手くいけばホッとし、いかなければガッカリします。負荷試験の最中に、強めのアレルギー症状を呈する患者さんもおり、一人しか小児科医のいない開業医では、診療がストップしてしまいます。「負荷試験をやったばっかりに…」と考えることもありますが、しなければ医学的根拠のある医療はできなくなりますし、患者さんにも迷惑をかけてしまいます。
最近は、医師はリスクを避ける傾向にあると感じており、通常は開業医がここまで負荷試験をやらないと思います。しかし、新潟県では当院がやらなければならない立場にあると思っています。
食物アレルギーの啓発など力を入れていますが、同業者からの紹介がないことを考えると、残念ながら、中には「食物負荷試験」が広まって欲しくないと思っている医師もいると思います。そんな環境下でも、負荷試験を広めていかなければならないと思っています。


