10月に新潟市で開催する第4回「すこやか健康フェア」の準備を進めています。
過去3回は勝手の知った上越市での開催だったので、気も楽だったのですが、今回はいきなり県庁所在地の新潟市なので、正直戸惑いはあります。ただ、日本を代表する食物アレルギーの先生であり、私の恩師に来て頂くので、できれば多くの困っている方々に食物アレルギーの基本から最新情報までのお話を聞いて頂きたいと思っています。
このように、これまで県内の小児科医がほとんど取り組んでこなかった食物アレルギーについて、一番困っているのは患者さんとその家族であるのは間違いないので、正しい知識をいかに知って頂くかを考えて行動してきたつもりです。
例えば、私のお膝元の上越市で、「すこやか健康フェア」も過去3回行なってきた訳ですが、食物アレルギーのレベルがすごく上がったかと言えば、そうではないと言わざるを得ません。
医師は、医学的根拠のある医療をしなければならないはずなのに、いまだに「2歳までは除去するように」と指導している医師も多く、なかなか紹介もない状況が続いています。
開業医の場合、総合病院なら紹介しやすいという部分もあるのでしょうが、開業医か病院かの問題ではなく、その道の専門的な知識を持っているかが重要なはずです。これまでこういう連携の仕方がなかったせいか、私が対応することで、もう少し食材の増えるお子さんも少なくないはずで、敢えて言えば、患者さんにとっては好ましくない状況が続いています。
「どうせ除去していれば食べられる」と思っている医師がいるのだとしたら、いつ食べられるという目処も示されずに、毎食卵なら卵、乳製品なら乳製品を長期間除去し続ける患者さん家族の身になって考えて頂きたいと思っています。アレルギーの学会でよく言われるのは、医師の理解不足という側面も大きいということです。
当院が上越の地に開院して、まもなく4年になりますが、食物アレルギーに関しては、全くの“無風”とは言いませんが、私の思い描いた「変化」とはほど遠いのが正直なところです。
ただ、困っているのは食物アレルギーだけではありません。これは他科とも関係ありますが、乳幼児のアトピー性皮膚炎の診断が、少なくとも当院を頼って受診される患者さんの多くが正しくありません。ただ、最近は生後1~2ヶ月の赤ちゃんが「湿疹が気になる」と当院を最初に受診されるケースも増えており、少しは「変化」があると言えるのかなと思います。
かなり悔しい思いをしているのは、ぜんそくです。ぜんそくを何故か感染症にしたがる医師がいて、マイコプラズマといって点滴を繰り返していますが、通院しても良くならないと当院を受診され、ぜんそくと診断して治療するとすぐに軽快するというケースは増えています。アトピーの話と同様に、これも「やはり専門医に診せなければ」という考えが広まってきている証拠で、これは望ましい「変化」と言えます。
何が悔しいかといえば、ぜんそくを“風邪”や“気管支炎”、“マイコプラズマ”などといわゆる「急性疾患」として治療されているケースが多いため、当院でぜんそくと診断し、「慢性疾患」であり、「継続的に治療していく必要がありますよ」と説明しても、じきに治療を止めてしまう患者さんが少なくありません。
それは私の説明不足、力不足にも起因してるのでしょうが、何度説明しても通院治療が途絶えてしまいます。数ある慢性疾患の中で、一番通院率が悪いのがぜんそくであると聞いたことがあります。ですから、私の努力ではどうしようもできない部分もあるのだろうと思ってはいます。
ぜんそくは、以前は小児でも死亡例もありましたが、近頃は世界トップレベルまで減っています。死亡させないことは当然ですが、小児ぜんそくは成人ぜんそくと違い、治ることが期待されます。「小学校に上がるまで99%治る」と言っている医師もいるようですが、何を根拠に言っているのかと思います。小児ぜんそくは、以前は8割治ると言われていましたが、最近は5~6割というのが専門医の間の常識かと思います。
いずれにしても、できれば小児期のうちに治すように努力したいところです。ただし、地元ではぜんそくの専門医がいなかったためか、ぜんそくを継続的に治療して治すという土壌があまりないように感じています。もちろん、入退院を繰り返すお子さんは、病院を中心にキチンとした治療を受けているお子さんもいらっしゃいますが、継続治療を受けるべきなのに、発作を起こせば点滴をして、おしまいという対応をされている患者さんも時々受診されます。
私は、ぜんそくの重いお子さんを診ると、気持ちでは「絶対に治してやる」と思い、治療に取り組んでいるつもりですが、時間をかけて継続治療の必要性を説明しているつもりでも、じきに治療がストップしてしまうことが少なくないのです。
例え話になりますが、もし当院が20年前に開業していたら、今の小児ぜんそく医療はどうなっていただろう?と思ってしまいます。4年間で、若干「変化」を感じられるくらいなので、20年であれば、もっと大きな「変化」を期待してしまいます。
最近、「耐性菌」が話題になることがあります。抗生剤をむやみに使うことで、抗生剤にしぶとく、薬を使ってもすぐに死んでくれない、バージョンアップした菌が増えていると言われています。我々医師も、熱が出れば抗生剤を出すことが多いし、患者さんも抗生剤が出ていれば安心するという面もありそうです。
ここ最近、夏風邪もよく診ますが、熱が続く患者さんには細菌感染を見逃さないように、採血をさせて頂いています。血を採って「炎症反応」を調べるのですが、この値が低ければウィルス感染は明らかです。つまり、ウィルスには効かない抗生剤を処方する意味がないのです。
そういった話をすると怪訝そうな顔をされる患者さんも未だにいらっしゃいますが、良識的な医師であれば、抗生剤を出さないのは、常識なはずです。当院かかりつけの患者さんには、開院して4年近く経つと、私の言っていることが浸透してきて、「ウィルスには抗生剤は必要ない」との理解が深まってきたように感じています。
上越には「点滴待ち」という言葉があり、医院さんの点滴スペースに子どもが溢れ返り、点滴してもらうのに、先にやっている患者さんが点滴を終わるのを待たなければならないのだそうです。当院では開院4年の間に、胃腸炎の流行期に3~4人の点滴が重なったことが数回あったくらいで、「点滴待ち」を患者さんに強いたことは一度もありません。もし、当院が10年前とか20年前に地元にあれば、抗生剤の処方や点滴の頻度はどうなっていただろうと思います。
ただ、これはあくまでいわゆる“妄想”です。アレルギーの患者さん達は、他の医療機関で通院を重ねて、それでも改善がないために受診されます。専門医が対応することで、より適切に治療できれば、増大し続ける医療費を若干でも軽減できるはずです。しかも、必要のない抗生剤は使わず、必要のない点滴を減らせば、やはり医療費は減る方向に働くことでしょう。
ちっぽけな診療所である当院のやれることは、小さなことかもしれませんが、これからの10年、20年後に地元の小児アレルギー医療、小児科医療に「変化」を起こさせることが大切なのだろうと思っています。


