小児科 すこやかアレルギークリニック

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一緒に戦う
2011年08月05日 更新

アレルギーは、ぜんそくにしてもアトピー性皮膚炎にしても長期に渡り症状が出るため、患者さんやご家族にとっては大変です。

しかし、ガイドラインといってその病気の診断法や重症度に見合った治療法を指し示してくれる手段があるにもかかわらず、あまり利用されていません。

確かにガイドラインに沿っても、すぐに完治することはないのですが、症状に見合ったガイドライン推奨の治療をすれば、症状はコントロールすることはできると思います。慢性的に症状の出る病気を、症状が出ないようにコントロールできれば、苦痛は減らすことができます。

このガイドラインは、使用する対象が医師です。専門医は分かっているけれど、専門でない医師は理解が充分でないところがあり、すなわち、そういった医師が役立てるべきものとも言えます。ところが、ガイドラインの認知度が低く、その恩恵に預かれない患者さんが多いのが現状です。

食物アレルギーにもガイドラインがあります。軽い蕁麻疹が出る程度のものから、重いアナフィラキシーを起こす子もいますし、乳児もいれば、大人もいます。アレルギーを引き起こす原因も、卵、牛乳、小麦など比較的治りやすいアレルゲンから、ピーナッツ、ソバ、甲殻類などなおりづらい食品もあります。

最大の難点は、アレルギー検査が当てになったり、ならなかったりすること。検査が陽性で、食べると本当に症状が出る場合と、食べても何ともない場合があります。多くの医師が、このアレルギー検査を食べられる・食べられないの指標にしているので
当然“ズレ”は出てきます。つまり、食べてもいいのに除去されているケースは少なくないと思います。

そういった“不具合”をなくすため、食物アレルギーのガイドラインができました。目的は、成長期のお子さんに無駄な除去をして、成長や発達の妨げにならないように、また親御さんに無駄な努力をさせないためでもあります。

アレルギー疾患のガイドラインはその病気の分だけあると思いますが、一番普及しているのがぜんそくのもので、食物アレルギーは、全くと言っていい程利用されていません。

やや物騒な言い方かもしれませんが、タイトルの“戦う”相手のひとつは、医師の無理解な対応だったりします。他院で除去の指導をされているお子さんに「食物負荷試験」をして、実際にもっと食べられることを証明しています。

医師が理解不足であれば、患者さんや地域の園や学校関係者も理解が行き渡ることも難しいのも事実だろうと思います。

先日、当院で診ている重症の食物アレルギーの園児が、給食として米粉パンを出されました。栄養士のチェックの上で出されたのですが、何と全身に蕁麻疹が出て、みるみる呼吸困難となり、慌てて近くの病院に駆け込みました。

当院のやっている時間帯であれば、引き受けるのですが、当院からは遠い方だったので、近くの病院を受診されました。アナフィラキシーという強いアレルギー症状だったので、入院治療になりました。すぐに治療をして頂き、改善したそうです。

このお子さんはとりわけ牛乳アレルギーが強く、検査はクラス6といって、最強の値です。実は、今回の米粉パンに「脱脂粉乳」が含まれており、それに反応したものと思われます。

退院後、当院を受診して下さった訳ですが、ごく微量な乳成分に反応してしまったので、私の指示としては乳製品の完全除去となります。これまでも完全除去していたので、症状は出なかったのですが、今回は周囲のケアレスミスでアナフィラキシーに至ってしまいました。

園にいる限り、人がかかわる限り、ミスは起こると思っていた方がいいと思います。どれだけ園が気をつけていても、弁当の日に隣の子が乳成分の入ったおかずをあげてしまうかもしれません。子どもを預かる園の対応をしては、再発防止とアナフィラキシー発症時に速やかな対応に尽きると思います。

今回、微量な乳成分で強いアナフィラキシーを起こしてしまったので、私は「エピペン」を処方することにしました。エピペンとは、この場でも触れたことがありますが、アナフィラキシー改善薬です。不幸にも食物アレルギーで亡くなった患者さんを顧みると、治療が発症30分以降に行なわれていることが共通していました。ですから、アナフィラキシー発症時は30分以内に、エピペンを打つことが求められます。

“打つ”と書いたのは、エピペンは自己注射薬だからです。使用時には針が出て、エピネフリン(アドレナリン)という薬を注射できるのです。このエピペンを使えるのは、本人、家族、救急救命士ですが、園にいる時に誤食でアナフィラキシーを起こし、大雪など何らかの理由でこれらの打てるはずの人が駆けつけられなかった時には、園の先生がこのエピペンを使用することが人道上、許されています。これは園のみならず、小学、中学、高校も含みます。

小学、中学、高校の養護の先生は、いざという時にエピペンを使わざるを得ないことはご存知ですが、園の先生はほとんど知らないと思います。それを地元に広めていくのも、私の役割だと思っています。

こんなケースで、私のやっていることは、エピペンを処方している患者さんの通う園や学校の先生に当院まで来て頂き、アナフィラキシー時の対応や、最悪、園の先生が子どもを救うためにエピペンを使うことも想定されますので、エピペンの使い方を説明しています。また救急車を使うこともあるかもしれないので、その園や学校にアナフィラキシーを起こし得るお子さんがいることを消防隊員にも周知しておく必要があります。

これまで何人もこういう指導をやってきましたし、ここまでやる小児科医は少ないため、結構喜ばれているように感じていました。今回の患者さんに対しても、園も対処に困っているだろうと思い、お母さんから時間を作って来て頂くようにお願いしました。

そうしたら、お母さんの話では、そこの園長先生は来る気がなさそうだということでした。実際に園で起きたアナフィラキシーなのに、「こういうお子さんは経験がない、また起こしたら、お母さんに連絡する」という対応をされるそうで、園の対応としては危機管理意識が足りないと言わざるを得ません。

新潟県では、“平均的”な対応なのかもしれませんが、残念な反応にガッカリしました。次回に誤食によりもっと重い症状を起こしてしまったら、どう対応し、どう責任を取るつもりなのかと思ってしまいます。

お母さんは、また起こしてしまった場合に速やかに対応してもらえるように、そして何より自分のお子さんを守るために、私の提案を希望されているのですが、園は現時点では受け入れない方針のようです。こんな重症な食物アレルギーのお子さんは少ないでしょうし、経験がないのも分かります。分からないから、適切な対応を知っておくべきだと思うのですが、残念ながら食物アレルギーの「理解不足」がそうさせているのでしょう。

お母さんは、お母さんや私の思いが通じないため、園が思ったように対応してくれず、今後の対応に不安を感じていらっしゃいます。現時点での「何かあったら電話する」ということでは、園から母にほぼ“丸投げ”されている格好であり、園もいろいろと忙しいでしょうが、これでは食物アレルギーの子を一緒に支えていくことにはなっていないと思います。

お母さんとは、「これからもこういう「理解不足」とは戦っていきましょう」という話をしています。話し合いでもっと進展があることを願っていいます。