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予防接種の憂鬱
2011年08月22日 更新

医師は診療をして、そこから収入を得ています。

小児科の場合は、予防接種や健診も大事な収入源になります。普通は病気にならないと受診はしませんが、予防接種等は病気でない健康な子どもも受診してくれます。

どこの小児科もそうでしょうが、10月から12月にかけては、診療にインフルエンザワクチンが加わります。どこの小児科も、かかりつけの子どもを守るため、医院の経営を安定させるためにも、頑張ろうとすることと思います。

インフルエンザワクチンの場合、いつも感じていることがあります。

子どもの予防接種は三種混合やMRワクチンなど種類が多いのですが、インフルエンザワクチンだけ引き受けている医院さんもあるようです。特定の科を出して悪いですが、整形外科でもまだ小さい子に打っていると聞いて驚いたことがあります。

予防接種は、健康を守るために受けるものですが、ごく稀にアナフィラキシーショックを起こすことがあると言われています。もちろん、医師は“最悪のケース”も想定して対応しなければなりませんが、アナフィラキシーを扱ったことのないような科の先生は、どう対応するのだろうかと心配になってしまいます。

他の科で日本脳炎などの予防接種を受けた後に熱が出たり、接種部が腫れたと当院を受診される患者さんもいます。本来なら、予防接種は接種した医師が全責任を負うべきです。

副反応として起きたことにも、接種医が対処しなければなりませんし、副反応も程度が強ければ、メーカーに報告する義務も生じます。中には、接種をするだけして、熱が出たと連絡すると「小児科に行け」と指示する医院さんもあるようです。ちゃんと診て、分からなければ専門医に紹介するなど、キチンとした対応をするのが筋だろうと思っています。

インフルエンザワクチンの場合、卵アレルギーが話題になりますが、「卵アレルギーがあると接種できない」と決めつけたり、接種自体を引き受けない医師もいまだに多くいます。信頼して接種を受けようとして相談している訳ですから、闇雲に断るのはどうかと思います。できそうなところを紹介するのが、やはり筋だと思うのですが、筋を通そうとしない医院さんが多いように感じています。

多くの医院さんが、来月くらいからインフルエンザワクチンの予約を開始すると思います。ここぞとばかりに張り切っている医院さんもあることでしょう。

先日、上越市外のある小児科さんのホームページを見ていたら、予防接種のことが書かれていました。かかりつけに接種をしてあげたいけれど、期待に応えられるかどうか、というニュアンスで書いてありました。

私も少し前に触れましたが、今年のインフルエンザのワクチンは接種量に変更がありそうです。3歳未満が1回0.25ml、3歳以上が1回0.5mlというようにです。業者さんの試算では、過去の2倍程度のワクチンが必要になるとのこと。

更に、東日本大震災の影響を受けたワクチンメーカーもあり、どの医療機関も平年の2倍のワクチンを欲した場合、インフルエンザワクチンの供給量が足りるかどうかは、大丈夫という意見もありますが、明確でないところもあります。

医療機関は、最悪のケースを考えて動いた方がよく、当院でも希望される患者さんすべての期待に応えたいとは考えていますが、本当にできるのかは、まだ不透明な部分もあります。

日頃から、医学的“根拠”のあることをすべきだと繰り返しています。特に、なかなか守られていないアレルギーのガイドラインに沿った医療を広めたいと願っています。予防接種の予約に関しても、“根拠”のあることをすべきだろうと思います。過去にもワクチンの供給量が足りずに、ワクチンの奪い合いみたいになったこともありました。インフルエンザワクチンの予約を取る上で、不安要素があるならば、予約に慎重になるのは当然のことと言えます。

以前も当院かかりつけの患者さんが、たまたま他院を受診した際に、インフルエンザワクチンを勧められたそうです。一人でも多くということなのでしょう。力の入っている医院さんもいる中で、正直に“根拠”のある不安に触れた、この医院さんはすごいと思いました。

開業医は経営も大事でしょうが、患者さんの健康を守ることを最優先にすべきでしょう。大切なのは、最悪の事態を考えた上で、何においても“根拠”のあることをやることなのだろうと思っています。