食物アレルギーのお子さんが最も避けなければいけない状態が、アナフィラキシーショックでしょう。
以前、ある先生が「食べるのも命がけ!?」なんてことを書いていらっしゃいましたが、まさにその通りでしょう。子どもとっては、食べることって栄養になり、発育に必要なもので、また皆と一緒に美味しく食べることは教育上も大切なことだと思っています。
先日、当院を受診された患者さんが、エビとカニを食べたら赤くなった、ある魚を食べて少し経ったら蕁麻疹が出たとおっしゃっていました。これを聞いた医師は、「じゃあ、甲殻類とその魚は食べない方がいい」と言うかもしれません。
重症な食物アレルギーのお子さんなら、あれもこれも食べられないこともあるでしょう。これだけの情報なら、何も分かりません。3つとも食べられないのかもしれないし、3つとも食べられるかもしれない。1つだけが食べられないで、他の二つは“濡れ衣”で、食べても何ともないかもしれない。
アレルギー検査をさせて頂くことにしましたが、それよりも大事なことがあります。これまでの食事歴です。ちなみにエビとカニは少し食べたことがあり、その魚は好きで、普段から食べています。たまたま蕁麻疹が出る前に口にしただけかもしれない、という疑問も湧いてきます。
とりあえず、アレルギー検査をして、場合によっては負荷試験をして、親御さんの心配を取り去る必要があると思いますが、自分で言うのも何ですが、ここまで親身になる小児科医がどれだけいるかと思っています。
食物アレルギーを持つ乳幼児は多く、食べたいのに食べられないお子さんもいます。何でもかんでも食べられない訳ではなく、食べられないものを明らかにして、それにさえ注意していれば、皆と美味しく食べられるはずです。
ただ、「誤食」は起こり得ます。園や学校側の誤配膳だったり、隣の子が卵アレルギーの子に自分の卵焼きをあげてしまうかもしれません。知らずに口にしてしまい、アナフィラキシーを起こしてしまうかもしれません。
当院で診ている牛乳アレルギーのお子さんが、園で出されたパンの中に乳成分が入っているとは知らずに、食べてしまいました。栄養士はチェックしていたのですが、業者の乳は入っていないという言葉を信じて出した結果でした。この患者さんは重症の牛乳アレルギーであり、その後、重いアナフィラキシーを起こし、当院から離れた街にお住まいのため、近くの病院に入院してしまいました。
別のお子さんで、この春から当院にかかり始めました。1歳前に乳製品でアナフィラキシーショックを起こしたため、ず~っと乳製品を除去し続けていました。もう中学生です。もう10年以上、除去していることになります。
確かに重い症状だったので慎重になるのは分かります。ただ、10年も経てば治ってしまっているかもしれません。実は、春まで某県のこども病院にかかっていました。多分、その県ではかなり大きな病院です。残念ながら、食物アレルギーの専門医が不在で、どこまで食べられるという評価はなされていませんでした。
当院に来てから、乳を含む加工品で負荷試験は行なっており、確実に“外堀”を埋めていました。この夏に牛乳を飲めれば、牛乳アレルギーは卒業できるというところまで来ていました。
先日、負荷試験をやったのですが、最初は飲みたがりませんでした。そりゃ、そうでしょう。本人も意を決して飲み始めてくれ、多少の違和感を感じるものの、飲めていたため、少しずつ増量していきました。
このまま行けそうかと思いきや、途中で蕁麻疹が出始め、急に辛そうにし始めました。残念ながら、アナフィラキシーを起こしてしまいました。最終的には、アドレナリンの注射を行ないました。
このお子さんは、転勤のため、各地を転々とされていましたが、途中でアレルギーの専門医にかかっていたため、そこでは「エピペン」を処方されていました。春までこども病院にはかかっていたものの、エピペンは更新されておらず、使用期限切れになっていました。
今回の負荷試験結果を受け、予想外に強めの反応だったため、エピペンを処方することにしました。体調によっては、もっと少ない量でアナフィラキシーを起こしてしまうかもしれません。
脱脂粉乳入りのパンで重いアナフィラキシーを起こしたお子さんにも、エピペンを処方することにしました。これまでは当院ではなかったことですが、これらのことが同時期に起きたので、現在エピペンを2本同時に発注しています。
当院の心がけとして、エピペンを処方した場合、園や学校の担当者に医院まで来て頂き、エピペンの適応や使い方を指導するようにしています。最近は、エピペンを持っているお子さんが園や学校でアナフィラキシーを起こしてしまった場合、状況によっては、人命救助の観点から園や学校の先生がエピペンを使用せざるを得ないケースも起こり得ます。
エピペンは、使い方の研修を受けた医師しか処方できない決まりになっています。巷には「アレルギー科」を標榜する小児科医も多いですが、エピペンを処方する権利さえ持っていないアレルギー科の医師も存在します。エピペンの適応なのに、エピペンを持たされていない患者さんもいます。出しっ放しで、医師の説明不足により、いざという時に使えない患者さんもいると思います。
全国有数のアレルギー専門病院では、専門医が積極的に周囲に働きかけて、エピペン講習を行ったりして、食物アレルギー児のQOL(生活の質)を上げられるように努力しています。私は田舎の開業でしかありませんが、似たようなことはできるつもりだし、県内にはできる小児科医が少ないため、食物アレルギーの子ども達のために地道に活動はしていこうと思っています。


