講演会の準備をしています。
呼吸器疾患ということで、いま勉強していることを書けばいいのでしょうが、市内の養護教諭の先生も当院のホームページを見てくださっているようなので、あまり“手の内”をみせてしまうと、講演の話に新鮮味がないと思うので、別の話をしようと思います(笑)。
今年は、寒暖の差が例年より激しいせいか、ぜんそくの調子の悪いお子さんが多いようです。鼻風邪程度でゼーゼーすることもあり、ぜんそく発作を誘発させやすいライノウィルスのようなウィルスがいるのかもしれません。
先日、ゼーゼーするというお子さんが当院を受診されました。1年程前にかかって以来、ずっとかかっていません。1年前も1、2回かかったくらいです。
話はややそれますが、インフルエンザの予防接種を連日やっています。当院は電子カルテなので、受診患者さんがパソコンの画面上にズラッと並ぶ訳ですが、診察が終わると「次は誰かな」という感じで次に患者さんに目がいきます。
当院はアレルギーの患者さんが圧倒的に多いので、インフルエンザの予防接種も“常連さん”が多いのです。多くの患者さんがかかりつけなので、だいたい名前と顔が一致します。お互い信頼関係があり、私自身も頼られれば全力を尽くしますので、この時期は診察とインフルエンザの予防接種が重なり、ただでさえ忙しいのですが、満足感のある診療ができるているのかなと思っています。
話は戻りますが、さすがに1年も前に1、2回来られた患者さんまでは覚えていません(汗)。ただ、初めて当院を受診された時は、“根掘り葉掘り”聞きますので、その辺のことがカルテに記載されています。
先の患者さんの場合は、ゼーゼーを繰り返しており、「ぜんそくがあります」とその時点で診断されていました。本来、ぜんそくは慢性疾患であり、すぐには治らないので、通院する必要があります。風邪を引いて咳が悪化することも多いでしょうから、通常は1年も調子が悪くならないことはないのです。
今回、久々に受診された問診票をみると、「かかりつけ○○医院」と記載されていました。家の近くの医院さんのようですが、今回の問診票にもゼーゼーすると書かれており、ぜんそくの調子が悪いのは明らかでした。
「かかりつけで、この病気は何と診断されていましたか?」と聞くと、「風邪です」とおっしゃいます。正直、「ええっ…!?」と思いました。ゼーゼーする風邪なんて存在しないからです。
私が1年前にぜんそくと診断し、説明していたにもかかわらず、近くの医院さんでゼーゼー言っても“風邪”と診断され、“風邪薬”をもらっていたようです。さすがにここはガツンと言わなければならないと思いました。
ご家族がどの医療機関を受診しようと自由です。ただ、ぜんそくをぜんそくと診断できない医療機関に通っていても、お子さんを守ることにはなりません。慢性の病気なので、症状を繰り返します。その間、風邪薬しか出されていなかったとすると、ぜんそく発作に風邪薬は効かないので、症状は自然にゆっくり減っていたと思うのです。当然、ぜんそくと診断し、症状に見合った治療をすれば、速やかに症状は改善していたはずです。
ぜんそくの嫌なところは、お子さんのもともと細い気管支に痰が溜まり、内側に積もるので、空気の通り道が狭くなります。空気が周囲の痰とこすれて、痰が震えてゼーゼー言う訳ですが、と同時に通る酸素の量も減るので、呼吸が苦しくなります。夜間に咳き込んで目が覚めたり、苦しくて泣いたりします。そうなると、親御さんの目覚めてしまい、おちおち寝ていられなくなります。
こういう状況は、速やかに改善させる努力をしないと、お子さんが一番辛いのですが、家族も疲弊してしまいます。親御さんにしてみれば、ぜんそくと診断されることは重いことでしょうが、“風邪”と診断されている限りは症状の改善は望めず、適切に診断され、適切な治療を受けることで、初めて症状を抑え込むことができるのです。
多分、親御さんは「医者に診せておけば、どの医者でも同じ」という考えがあったのかもしれません。だったら「近くの医院でも十分だ」とお思いだったのでしょう。
説教するつもりはありません。ただ、当院を受診したことがなければ致し方ありませんが、受診してぜんそくと説明を受けていたにもかかわらず、近くの医療機関で症状に見合わない治療を受け続けていたことは、ちょっと反省して頂く必要があろうかと思いました。
医師は、決してお子さんを救ってくれるとは限りません。患者さんは“素人”ですから、分からないのは仕方ありません。ただ、まず信頼ありきで通院されていますが、医師がその期待に応えようとしていないケースもよく目にします。
日頃から「患者教育」は必要だと痛感しています。医師の実力や良心にも大きな差があり、この辺も親御さんに説いて教える必要があるのだろうと感じています。


