当院の場合、年末は“駆け込み需要”でとても混雑します。
午前の外来に100人ほどの受診があると、当院は混雑していることを理由に“流れ作業”にはならないようにしていますので、相当気を遣うし、正直言って心身ともに疲れます。自分でも知らないうちにため息をついているようです(大汗)。
ただ、先日久々に温泉に行ったと書きましたが、いいリフレッシュになったようで、そのような状況でも身体が軽く感じました。やはり忙しい時ほど、ガス抜きは必要なんだと感じています。
さて、先日、エピペンの使い方の話をした時のことです。
1時間以上かけて話をして、最後に質問を受け付けた時に「エピペンはAEDと同じような扱いなんですか?」と聞かれました。
AEDとは、「自動体外除細動器」のことで、致死的な不整脈の際に使用する器械のことです。必要な時に電気ショックを行ない、心臓を元通りにする働きを持ちます。かつては医師しか使うことができなかったそうですが、2003年に救急救命士が使えるようになり、2004年7月から一般市民でも使用が認められています。
日本の場合、救急車が現場まで到着する平均は6分ほどだったと思いますが、心停止3分で死亡率が50%なので、救急車の到着を待ってはいられない訳です。AEDを一般市民が使って救命できたケースもあり、時々ニュースになったりしています。
質問して下さった方は、以前私の診ている食物アレルギーの患者さんがアナフィラキシーに至った時に、本人と一緒にエピペンを使って下さった方でした。
確かに「流れ」は一緒のようです。AEDもエピペンも、致死的な病態を一刻も早く脱却させる装置です。場合によっては病状が一気に悪化するため、救急車の到着を待っていられないこともあります。最初は医師しか使えなかったのが、救急救命士が認可され、一般市民である学校や園の先生が使っても良いことになっています。
幸いというか、私自身はAEDを使ったことはありませんが、AEDは器械が電気ショックを必要かどうかを判断してくれるようです。そういう意味では、エピペンは人の身体に針を刺し注射する訳ですから、抵抗感はあるでしょう。
ただ、致死的な不整脈は突然起こることもあり、それが初めてもこともあるでしょう。一方、アナフィラキシーショックは、アレルゲンを食べて、比較的短時間で発症してきます。しかも、初めて起こった時は原因がよく分からないこともあるでしょうが、既にその食べ物で危険な状態になったからこそ、その患者さんに対してエピペンが処方されている訳ですから、危険性が予知できているのです。
エピペンの方が処置が必要かどうか器械が判断してくれるAEDに比べると、また注射器を使うと言うことからも、“取っ付きづらい”感じはあるのかもしれませんが、考えようによっては対応はしやすいのだろうと思っています。
食物依存性運動誘発アナフィラキシーのように、大きくなって急に発症してくる病気もあります。何の前触れもなく、致死的な食物アレルギー症状を起こすこともあります。この場合は、エピペンが処方されていませんので、そういう状態に出くわしたら、救急車を呼んで病院に搬送するしか方法はないのです。
先日の勉強会で、「急なアナフィラキシー様の症状を起こしたお子さんがいたとすると、別の患者さんのエピペンを使ったもいいか」という質問も出ました。しかし、その患者さんが本当にエピペンを使うべき病気なのかは、一般の方には判断できないはずです。例えばてんかん発作で意識をなくした場合に、アナフィラキシーショックと勘違いされても困ります。他の患者さんのエピペンを流用することは、してはいけないのだろうと思います。
冒頭のエピペンを使ったことのある方も、アレルゲンを食べて具合が悪くなったことを確認した上で使用されており、適正な使用でした。エピペンを使用されたのは、実は3年も前のことです。
2008年4月に文部科学省が学校職員がいざという時にエピペンを使ってもよいと認めていますが、その数ヶ月後に使用されています。当時は、今ほど学校や園職員がエピペンを使ってもいいと言うことにはなっていなかったのです。キチンと勉強されていた上での、適正使用だったため、プロ意識の高さを感じるし、頭が下がる思いです。
エピペンは、園や学校関係者が使っても違法性はないということになっています。AEDの場合は、一般市民が使ってよいということになっているので、若干対象が異なるように思います。そういう意味もあってか、一般市民の方でもAEDの使い方を学ぶ講習会も行われているようです。当然、一般市民への認知度もエピペンに比べれば高いと思います。
園や学校関係者で、しかも既にエピペンを処方されているお子さんにかかわる人となると相当狭められます。少なくとも、そういう方々がエピペンのことを理解しておく必要があると考えており、来年1月~2月に既に3回の講演予定が入っています。
必要な方々に、必要な知識を持って頂くために、地道に努力していかなければならないと思っています。


