小児科 すこやかアレルギークリニック

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谷を越え、山を越えて
2012年03月01日 更新

毎日のように外来をやっていると、珍事件は結構と起きます。

先日、卵を食べていたのに、食べてはいけないと言われた患者さんが当院に相談に来られました。

ある医院さんでインフルエンザのワクチンを接種したそうです。そうしたら間もなく、接種部位がやや腫れたのだそうです。接種して、たいして時間が経たない状況で、その場所が腫れたのなら、因果関係はあると言わざるを得ません。

接種した翌日に熱が出たというのなら、たまたま翌日に風邪を引いたのかもしれません。この場合は、予防接種の副反応の可能性はありますが、間違いなくそのせいだと言うには決め手に欠くと思います。今回のように接種部位が30分も経たずして腫れるのは、ワクチンの中の何らかの成分に反応したと考えるべきでしょう。

某医院さんでは、それをみて「卵アレルギー」と診断したそうです。ご丁寧にアレルギー検査もやったそうですが、検査はクラス2だったそうです。そうなると「ほら、やっぱりそうだ」と思ったのだと思います。

プロなら、卵の摂取状況を確認するはずですが、肝腎のそれがありませんでした。その患者さんは卵製品は食べており、卵アレルギーというには無理があります。インフルエンザワクチンよりも相当に濃い卵製品を摂って何も起きていないのです。そもそも卵アレルギーは、卵を摂って、その結果としてアレルギー症状を起こし、因果関係がハッキリしたものに対してそう診断するものです。

ワクチンに含まれる卵成分で反応するなら、卵製品は食べられないのではないでしょうか?。ですから、今回はワクチン内の何らかの成分に反応したとしか言えないと思います。

この患者さんは、卵製品は摂っていたにもかかわらず、卵製品を食べてはいけないと指導されたそうです。即座に誤った指導と判断できるので、患者さんがとても気の毒でなりません。

実は、この医院さんで以前もこんなことがありました。蕁麻疹が出て受診したら、数時間前に食べた食パンが原因として疑われたようです。アレルギー検査でミルクがクラス2でした。パンの中には脱脂粉乳が含まれており、ミルクの値が陽性だったことから、その医師の頭の中では「ミルクが原因」という考えで一杯になったのでしょう。一切の乳製品を摂ってはいけないと指導されました。

その指導から1年経ち、親御さんもいつまで除去を続けるのか不安になり、当院を受診されました。いろいろと話を聞いた結果、乳製品の除去が必要ないことが判明しました。

何故なら、1年前の時点でその患者さんは牛乳を飲んでいました。パンの中の脱脂粉乳に反応し、ずっとずっと濃い牛乳で反応しないミルクアレルギーなんてあるでしょうか?。

そうです、乳製品が“無実の罪”を着せられていただけなのです。つまり、患者さんは1年間も除去しなくていいものを、必死になって除去していたのです。蕁麻疹の出る少し前に、食パンを食べたがために犯人扱いされてしまったのです。

敢えて言えば、これだけ患者さんに迷惑をかけ、謝らないどころか、費用まで払って感謝されているのは医者の世界くらいではないでしょうか?。しかも、2回も同じことを繰り返しています。

これも敢えて言えば、開業医は誰も「あなたは間違っている」とは言ってくれないので、同じ過ちを繰り返しやすいと言えます。自身の発言には責任を持つべきだし、慎重であるべきです。こういうレベルの指導をする「アレルギー科」であれば、患者さんが混乱してしまいます。

ちなみに、この医院さんから食物アレルギーの患者さんが紹介された試しがありません。これ以上は言う必要はないでしょう。多分、これらの患者さんは氷山の一角の可能性が高いと言えるでしょう。

患者さんは、自分の身を守るためには、ある程度は知識を持たないといけません。

未だに検査が高いからと、完全除去を指示する医師も少なくありませんが、今まで食べていたものまで除去を指示されるようなら「この医師の言うことは正しくないのではないか」と疑ってかかる必要があります。

私の過去の経験から、食物アレルギーに詳しくない医師は、患者さんがより深く質問しようとすると機嫌が悪くなったり、診察室を追い出されることもあります。専門医なら、毎日食べる「食」に関する問題なので、理論的に時間をかけて説明してもらえるはずです。

残念ながら、昨日の話もそうですが、医師が正しいことをやるかと言えば、必ずしもそうではないと思います。専門医と非専門医の間には、場合によっては月とスッポン程の差が存在します。

関東の有名な食物アレルギーの専門の先生が講演の際に「谷を越え、山を越えてでも専門医にかかるべき」と言っていましたが、食物アレルギーは「とりあえず近間で済まそう」と思っていると危険な場合もあることでしょう。

最近は、新年度が近づいているせいで食物アレルギーの患者さんが増えてきました。よく考えて、おかしな指導をされていると感じたら、相談に来て下されば対応させて頂きたいと思っています。