小児科 すこやかアレルギークリニック

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エピペンの話
2012年03月16日 更新

食物アレルギーの最悪のケースは、アナフィラキシーショックです。

軽ければ、抗ヒスタミン薬やステロイド薬の内服で対応しますが、全身蕁麻疹や呼吸困難が出た場合、エピペンというアドレナリン自己注射を使います。

エピペンには、様々な問題点があります。薬自体ではなく、取り扱いという意味です。

新潟には食物アレルギーに理解のある医師が少ないため、適正に処方されていないケースも目にします。つまり、アナフィラキシーを起こしたことがあるのに、持っていてもおかしくない状況にもかかわらず、患者さんに処方されていないのです。

そのひとつの要因として、エピペンの処方は全ての医師が行なえる訳ではないことが挙げられます。使い方の研修を受け、エピペンを処方できる権利を持っていなければ、処方できない決まりがあります。残念ながら、「アレルギー科」を標榜しながら、この権利を持っていない医師の方が多いくらいです。

一般診療では、エピペンでなく、ボスミンというアドレナリンを筋肉注射することになるのですが、医師によっては使うタイミングがかなり異なります。アナフィラキシーショックなら使う医師も多いのかもしれませんが、その一歩手前の状況で、使うべきなのに使わない医師も多いようです。

アナフィラキシーは、一度起こると加速度を増して悪化するので、早めに使うのがポイントです。専門医の間では、アナフィラキシーを5段階の分類しており、軽いものがグレード1、最重症がグレード5となっていますが、推奨されるのはグレード3からと言われています。やはり、タイミングは往々にして遅いのです。

医師にまつわる問題はこの辺りでしょう。学校や園でアナフィラキシーに陥った場合、救急車を要請したり、親御さんに連絡することになるでしょうが、いつも数分で来てくれる訳ではないでしょう。特に重症者では10分、20分以内にショック状態になることもあります。

食物アレルギーの患者さんも少なくない事実を受けて、文部科学省や厚生労働省が学校・園の職員がアナフィラキシー時にエピペンを注射してよいという決定を下しています。もちろん、親御さんや救急車がすぐに到着する、病院にじきに搬送できる状況では、エピペンを使う必要はないでしょう。ただし、最悪の状況で使えるように準備しておく必要があります。そうしなければ、学校や園側の責任を追及されかねません。

ところが、学校や園側が「最近は、いざと言う時にエピペンを使わないとけない」ということは理解していても、圧倒的に食物アレルギーに関する情報が不足している現状があります。

そこで、私がエピペンを処方している患者さんが在籍している学校や園に「エピペンの話をしにいきましょうか?」という話を持ちかけています。実際、渡りに船という感じで既に何件か出掛けていますし、来月も何件が予定があります。

以前、私の診ている患者さんがアナフィラキシーショックを起こしました。本当に危険な状況でしたが、学校側は何もしませんでした。その時の状況を聞いていると、学校側が危機感の薄い状態と感じました。

「今回はエピペンを使うべき状況だったので、それができなかったとなると、よく理解して頂く必要があります」と言ったのですが、「エピペンの取り扱いビデオを観たのでよく分かっています。来なくていいです。」という驚きの返事が返ってきました。

このままでは同じことを繰り返すと感じましたので、半ば無理矢理?説明をしてきました。どういうことかと言いますと、エピペンで大事なのは、使い方ではなく、打つべきタイミングだからです。そりゃ使い方が分からなければ問題外ですが、ビデオを観れば分かるくらいのことです。

残念ながらビデオには、どんな時に使わなければならないかが解説されていないのです。使わなくていい状況で打つのも問題だし、使わなければいけない状態にもかかわらず打たなければもっと問題です。

当院では、遠くから食物アレルギーの患者さんが受診されており、エピペンに関しても上越市内より、市外の患者さんが多い状況です。処方している児の在籍している学校や園のすべてに出向く気持ちはあるのですが、働きかけても音沙汰のない学校や園もあり、分かっているから話を聞く必要がないということではないと思っています。先ほど挙げた例のように、逆にそういうところの方が何もできないだろうと不安に感じています。

特にエピペンを処方されている児のいる学校や園では、すべての職員がエピペンの使い方を知っておく必要があり、となると医師が出向いて説明する以外に方法はなくなります。私の処方している患者さんには「出向いて話をするよ」とは言っていますが、まだまだ半分にも満たない状況です。

県内には、こういう活動をしている小児科医はほとんどいないと思われ、学校や園も「こんなことはしてもらえないもの」と考えていると思います。こういうことも含め、エピペンの正しい知識を広める努力を続けていかなければならないと感じています。