日頃から指摘しているように、日本の保険診療では大勢患者を診た方が有利です。
もう一つ言えるのは、たくさん薬を出した方も有利です。その結果、もしからした飲まなくてもいい薬が処方されているケースにも遭遇します。
よくアレルギーの患者さんに、抗アレルギー薬が延々と出し続けられていることがあります。これに対し、常々疑問を持っています。
私の感覚からして明らかに必要ないと思われれば、「この薬って効いていると思いますか?」と言うようにしています。「いや、どうでしょう」とか「私も必要あるのかと思っていたんですよね」という親御さんがほとんどです。
止めてみて症状の悪化がなければ、飲む必要性があるのかと疑うことも大切だと思っています。親御さんも、できれば必要ないであろう薬をお子さんに飲ませることには抵抗があるはずです。
ただし、ぜんそくの場合はちょっと異なります。症状が重ければ、発作を起こさないように一定期間予防することが必要ですから、続けて頂きたいと思っています。ぜんそくの治療を止めてしまうと、すぐには発作を起こしませんが、風邪などをきっかけにゼーゼーすることが多いようです。ただし、ぜんそくと診断できないようなケースにキプレスなどの抗アレルギー薬が延々と処方されているケースも見かけます。
先日、新潟市からアトピー性皮膚炎の患者さんが受診されたと言いました。親御さんもお子さんの症状を良くしようと一生懸命で、悪化要因が何かを知りたくて120キロの距離を当院まで来てくださいました。
私の考える悪化要因は、“医師の腕”でした。アトピー性皮膚炎は日本アレルギー学会が作成したガイドラインに則り、キッチリ治療すれば、かなり改善します。要はそうされていなかったという初歩的な問題でした。
ステロイド軟膏の誤解を解き、FTU(フィンガーチップユニット)という世界基準の塗り方をすれば、かなりきれいになります。アトピー性皮膚炎を扱うのは小児科医と皮膚科医が多いでしょうが、残念ながらそうしていない医師がとても多いというのが新潟県の現状です。
1週間後に再診して頂きましたが、驚く程、症状が改善していました。私の結論づけた“悪化要因”の判断は間違っていなかったようです。
実は、親御さんにとって、もう一つ驚くことがあったようです。
これまではどこの小児科、皮膚科に行っても、抗アレルギー薬を飲むよう指示されていたそうです。私は初診時に「必要がないのでは?」と言っていたのです。
私の考えはこうです。アトピー性皮膚炎の場合、皮膚が炎症を起こしているために赤みや痒みを生じています。炎症を抑え込めば、赤みも痒みも相当減らすことができます。これまでの治療がイマイチで、皮膚の炎症が抑えられていなかったので、軟膏治療でしっかり抑え込めば、飲み薬なんて必要ないのではないか?と思ったのです。
実際、当院で診ているアトピー性皮膚炎の患者さんのほとんどは、抗アレルギー薬は飲んでいません。一部の重症な患者さんで、飲んで有効性が確認された方のみです。そうしているのは、私のポリシーでもあります。
必要のない薬を出し続ける程、医院の利益は上がるかもしれませんが、医師としてそんなダサイことはないと思っています。必要な薬のみを処方するのが、本当のプロだと捉えています。
ぜんそくをわざとマイコプラズマと診断して、点滴を繰り返しているとしか思えない小児科さんもいます。重症化しており、まともな小児科医なら病院へ入院をお願いするところなのに、医院に点滴を1週間も通わせるような、「良心的な医療」とはかけ離れたことをする医療機関もあります。こんな医院さんもあるので、経営を中心に考え、「飲ませ続けておけばいいや」なんて考える医院があっても不思議ではないのです。
おかしな医療をあぶり出し、適正な医療を広め、地元の子どもを守るのが私の使命だと思っています。そのためには、私が同じことをやっていては人のことは言えない、ということになってしまいます。儲からないかもしれませんが、必要のないであろう薬は出さないように心掛けています。
単に知識不足でアトピーと言えば、抗アレルギー薬を出し続けるものと思っている医師もいるかもしれません。軽症なら必要ないと考えていますし、当院で現在抱えているアトピー性皮膚炎の患者さんはかなり多いですが、そういう方針で治療して、特に困っていないと感じています。
今回の患者さんも、どこの小児科や皮膚科に行っても抗アレルギー薬を「飲め、飲め」と言われており、当院のように「抗アレルギー薬は必要ないのでは?」と言われたのは初めてだとおっしゃいます。
先ほど述べたように、この患者さんはFTUで薬をキチンと塗ることで、皮膚はツルツルの状態になりました。その結果、痒みは治まり、あれだけ掻き壊していた皮膚をほとんど掻かなくなったそうです。
逆に、これまで抗アレルギー薬を飲んで掻いていた訳ですから、前医の皮膚科の先生には「自分に治療の問題があるのではないか?」、「抗アレルギー薬は飲まなくても変わらないのではないか?」と考えて頂きたかったと思っています。
私が新潟市でも新潟県内でもいいですが、アトピー性皮膚炎の患者さんを診れば、多くの飲まなくても必要ないであろう薬は中止できるのではないかと思っています。そうすれば年々増大する医療費を減らすことができるでしょう。
結局のところ、各医師がステロイド軟膏の使い方を理解し、ステロイドに不安を持つ患者さんに充分説明し、患者さんと向き合って治療していけば、皮膚症状をもっと良い状態にでき、内服薬も減らすことができるのだろうと思っています。
ステロイドを使って副作用が出て、患者さんから訴えられたらどうしよう?と考える医師もいない訳ではないと思います。であれば、専門医に紹介すべきですが、それすらなされていません。
県内には、アトピー性皮膚炎に関する様々な問題もあり、それを何とかしなければ患者さんのQOL(生活の質)は上がっていかないだろと思っています。


