先週末、大阪での学会に参加してきた訳ですが、日本のぜんそく事情を表すような話を聞いてきました。
話は、アスリートとぜんそくについての内容でした。特にトップアスリートになると、ドーピングの問題が絡みます。フェアプレーが信条のスポーツで、薬物を使ってでも勝ちたいと考える選手はいるようで、それを除外する必要があります。
ぜんそくの治療に用いられるステロイドやβ2刺激薬(気管支拡張薬)は禁止薬剤に含まれているものもあります。一方で、本当にぜんそくであれば、その選手も患者さんなのですから、世界的に認められている薬剤は使ってもいいはずです。つまり、その選手がぜんそくであることを立証すれば、認められなければなりません。
以前は、そういうことにも緩かったようですが、ここ最近はだいぶ厳しくなってきたようです。となると、日本もトップアスリートがぜんそくを持っているかどうかを把握する必要があります。
以前、アスリート達にぜんそくの有無を聞いたところ、「ぜんそくを持っている」と応えたのは全体の1.2%だったそうです。ちなみに海外では、オリンピックなどの大きな大会に参加する選手のぜんそくの有病率が30%くらいはあると発表しており、冬季五輪でしたか、半数以上の55%がぜんそくだったと公表している国もあるくらいです。
となると、日本の選手への聞き取り調査の1.2%という数値は「低過ぎる」と考える方が無難だと思います。
何故そうなるのか?、それはアスリートにかかわるスポーツドクターが、怪我や故障を診る整形外科医が多いということも無関係ではないようです。私も整形外科のことはよく分からないし、整形のドクターも内科系の疾患であるぜんそくは詳しくないものと思われます。
また、トップアスリートだと転戦や海外遠征などもあるでしょう。あまり一カ所にとどまっておらず、ホームドクターを持ちにくいという事情もあることでしょう。
先ほど述べたように、オリンピックのような世界大会の参加に関し、相当厳しくなっており、国がアスリートのぜんそくについて本人任せではいけない状況になっています。
そこで、アスリートに「呼吸機能検査」を行なうことになったそうです。これは胸に貯めた空気を一気に機械につながった筒の中に吐き出す検査で、ぜんそくがあると低い数値になることがあります。
ぜんそく発作を起こすと気管が狭くなるため、胸に貯めた空気を一気に吐き出せないのですが、発作を起こしていないと異常を示さないこともあります。ただ、決して軽くないぜんそくがあれば、気管支が傷んでやや狭くなっているため、呼吸機能検査が異常値を示すことがあります。
この場合、わざとぜんそくの発作時用に使う気管支拡張薬の吸入をしてみるのです。もし、吸入の前後で異常だった検査値が正常化すれば、ぜんそくの治療薬で改善しているので、「ぜんそくがある」という証明になると考えるのです。
そのように精査してみると、ぜんそくであろうと判断されるアスリートは10%を越えるようです。最近は、ぜんそくの分野でもガイドラインによりお薦めの標準治療があるため、ぜんそくという持病があることを申請すれば、その薬は使えることになっています。
自分の体を知らないことは、逆にハンディになるのだと思いますが、適切な治療を開始することで、なんと「持久力が増した」、「記録が良くなった」という報告もあるのだそうです。
当院には、未来のアスリート?である子ども達が受診していますが、ぜんそくが見逃されていたり、少し前にも触れましたが、ぜんそくでも感染症にしたがる医院さんもあるようで、マイコプラズマなどと診断されている患者さんも少なくありません。体育や部活などで本来持つパフォーマンスを発揮できないことになります。
今回の学会での話を聞いて、日本ではぜんそくの認知度が低いことが露になったと思っています。トップアスリートの本人でさえぜんそくを持っていることに気付いていないという信じ難い状況があるのだと思い知らされました。内科医などにかかったことのない選手はいないでしょうから、医師がぜんそく症状を見逃している可能性があります。
いつも書いているように、医師が治療しても改善がなければ、呼吸器系の専門医に紹介するという、良心的な医師であれば当たり前のことができてないため、こうなっている可能性を考えます。当院に来られる患者さんには「マイコプラズマじゃないから、マイコの治療をしても良くならないんですよね」というと、「そうですね」とすぐに気付いて頂けます。残念ながら、“誤診”する医師は繰り返し、誤診をしています。
普段、食物アレルギーやここ最近はアトピー性皮膚炎の話をしていますが、ぜんそくについても正しい情報を発信する必要性を感じています。


