小児科 すこやかアレルギークリニック

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2012年06月26日 更新

週末の感染症の講演のスライドを作っています。

以前、私が市内の園の先生100人以上が集まる会合で、子どもの感染症についてのお話をさせて頂きました。それが好評で、園の保護者を対象にまた話して欲しいと依頼がありました。

園長先生と事前に打ち合わせを行なった訳ですが、私の話をいたく気に入って頂いたようで、同じ話で構わないということでした。有り難いことです。当時の講演で、逆に衝撃的だったのが、ウィルスに抗生剤が効かないということを初めて知ったという意見を聞いたことです。

これは我々医師が勝手に“常識”と思っているところから、こういう事態を招いていると反省させられます。感染症には、大きく2種類の原因があり、ひとつはウィルスで、もうひとつは細菌です。

一般の方は抗生剤は、風邪の特効薬と思っているようですが、そうではないのです。これはご存知の方も多いのですが、インフルエンザの治療薬としてタミフルがあります。タミフルは「抗生剤」ではありません。「抗ウィルス薬」です。水ぼうそうの時もゾビラックスやバルトレックスを使いますが、これも抗ウィルス薬です。

それぞれインフルエンザウィルス、水痘•帯状疱疹ウィルスにより引き起こされています。帯状疱疹?ってお思いでしょうが、初めてかかった時は水ぼうそうになり、その後、このウィルスが体に潜んでいることがあり、体力が落ちた時などに体に帯状に水ぶくれができるのが帯状疱疹です。同じウィルスが悪さをしているのです。

一般的には、ウィルスをやっつける薬といったら、この2種類のみです。いま流行っている手足口病、リンゴ病、ロタウィルス、アデノウィルスなどには有効な抗ウィルス薬がないのです。

一方、細菌は、小さな子が重症感染症を起こしやすいことから推奨されている肺炎球菌ワクチンやヒブワクチンは、肺炎球菌とインフルエンザ菌を予防するためです。溶連菌も最後に「菌」という字がついています。

要は、最後に「菌」がついていれば細菌で、「ウィルス」とつけばウィルスとなります。そして、その治療は「菌」には抗生剤が有効です。ウィルスには、効きません。もちろん、「そんなの知ってるよ」という親御さんも多いと思います。ただ、お子さんが病気になると動転してしまい、医師に全てを任せてしまう方もいらっしゃいます。

抗生剤は、内服と点滴があります。中には、ウィルス感染なのに抗生剤の点滴に通っている患者さんもいることでしょう。これまでの話を聞けば、これが根拠のない治療であることに気付くはずです。ただ、「念のため」なんて言われれば、大抵の患者さんは「はい、お願いします」と答えるでしょう。使う薬が多ければ、医院の経営に有利になります。

昨年、全国的に手足口病が大流行しました。近くの内科で抗生剤の点滴をしても熱が下がらないと、当院を受診された患者さんがいました。手足やのどに独特の水疱を認め、手足口病と診断しました。これは夏風邪のウィルスが原因であり、これに効く抗ウィルス薬はありません。確かに手足口病に細菌感染を合併しているなんてこともない訳ではないでしょうが、手足口病が流行しており、熱が出ることもある病気です。そう考えると、抗生剤は使う必要がなかったと思います。

昨日、子どもの医院でロタウィルスの検査を依頼したら「治療が先でしょ」と親御さんが怒られた話をしました。患者さんは怒られたら、何も言えなくなるでしょうが、明確に反論できます。治療が先ではなく、診断が先です。

敵を認識して初めて、それに見合った治療をすることができます。ロタウィルスも高熱が出る病気ですが、抗生剤を使うのはルール違反です。これもウィルスが原因だからです。ロタウィルスは最近ワクチンが発売になりましたが、適応年齢が限られており、残念ながら、治療として有効な抗ウィルス薬は開発されていません。

患者教育という言葉があります。患者さんも病気について、学び、よく知ってもらうということです。大きな声では言えませんが、経営に有利な治療法を使っている医院さんもあるでしょうし、逆にそれが、患者さんにとって正しい病気の認識でさえも邪魔しているのではないかと思っています。

お子さんの熱が続くと、血液検査をやる医療機関が多いと思います。あれはCRPという「炎症反応」というものをみています。それが高ければ細菌感染の可能性が高く、低い値ならウィルス感染を考えます。

当院の場合、炎症反応が低ければ、ウィルス感染の可能性が高く、この場合は抗生剤は使っても意味がないだろうと説明しています。確かに抗生剤をもらうと安心するという親御さんも多いでしょうが、それが正しい認識を邪魔しています。プロとして、出して欲しがっていても、「ここは必要ない」と言ってあげる方が患者教育につながります。私も、熱が出ている患者さんに抗生剤を出すこともあります。ただ炎症反応をみて、必要ないだろうと判断すれば、まず出していません。

日頃からアレルギーに関する誤解や理解不足を解消する一助になればと、この場でいろいろ書いていますが、小児科医の基本である感染症でも地元には、様々な誤解や理解不足があります。時間をかけて病気の説明をする医療機関が限られるせいもあると思っています。病気のことや先ほどの炎症反応の説明をしっかりするには、結構時間を取られます。医師がなおざりにしてきた部分もあるのだろうと思っています。

私の努力不足もあるでしょう。ただ上越の地で、正しい医療を広めたいと思っていますし、医師の言いなりにならないような患者さんを増やしたいと考えています。やはり、自分のお子さんを守るには、親御さん自身もある程度の知識は持たなければいけないと思っています。

週末の感染症の講演では、小児科医が胸に聴診器を当てたり、のどをライトでのぞいたりしていますが、それで何が分かるのか?、血液検査で炎症反応を調べているのですが、その数値をどう判断して治療に結びつけているのか?なども話に含めるつもりです。

この辺は「患者さんも分かっていること」と医師が一方的にそう思っていることが多いでしょうから、その反省も踏まえて、親御さん達に感染症や小児科医の仕事に興味を持って頂けるような話を思案したいと思っています。