小児科 すこやかアレルギークリニック

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ハートに火がつく
2012年07月02日 更新

土曜に市内の園で感染症の講演をしてきました。

それについて、今度書こうと思っています。ただ、プロジェクターの調子がイマイチで、視覚的に訴えるのもポイントのひとつでしたので、のどの所見、湿疹の様子がうまくスクリーンに映し出せず、残念でした。場合によっては、マイプロジェクターを持っていった方が良いこともあるんだなと思いました。

そんなトラブルがあったにもかかわらず、最大のポイントの、小児科医の基本である感染症であっても、医師によって診断や治療が異なってしまうという「あってはならないこと」が地元では結構起きていることは、お伝えできたと思っています。

これまでの“感染症モード全開”から、いつものモードに戻りたいと思っています(笑)。先週末に、卵アレルギーのお子さんに加熱した卵を使って「食物負荷試験」を行ないました。その話を触りの部分だけしていたと思います。

その患者さんとの出会いは3年前にさかのぼります。N市の方で、当時かかっていた小児科でアレルギー検査をするたびに「アレも食べるな、これも食べられない」と“指導”されていました。これをお読みの方は、この“指導”が誤っているのは、すぐにお分かりだと思います。一般の方が分かって、医師が分からないのは、医師がプロではないことを表しています。

確かに卵白もミルクも検査は高かったのですが、卵焼きや牛乳はすぐには無理でも、加工品なら食べられる可能性を考えるべきです。実際、食物アレルギーのガイドラインには、子どもの成長・発達も考慮して、「必要最小限」の除去にすべきと明記されています。

要は、小児科医は「わずかに卵や乳成分を含む加工品まで除去する必要があるのか?」と悩むべきで、それを検証するには「食物負荷試験」が不可欠となります。安易に「卵や乳成分を含むものは一切除去しなさい」という小児科医がいますが、「じゃあ、自分の子どもにやってみたら?」と言いたくなります。もちろん、病気が重ければ、一部例外はあります。それも確認すらしていませんでした。自分ができないことは、人には強要できないと少しでも悩んで頂きたかったのです。

ミルクも検査は陽性でしたが、徐々に解除できました。卵はクラス6でした。私はこれくらいでは、へこたれません。何度も「食べさせてあげたい」と願い、実際に食べられたケースはクラス6の場合、80%近くも経験しているからです。

親御さんも、前医から「食物負荷試験」の存在すら知らされていませんでした。親御さんも私の方針を良く理解して下さり、「(当院までの)70キロくらいは近いもんですよ」なんてあっけらかんと話していました。

これまで食べていた食事内容を聞き、カステラくらいは食べられるのでは?と考えました。これは3年前に行なった負荷試験ですが、予想外に蕁麻疹が出て、咳も出てしまいました。アナフィラキシーという状況です。

親御さんも、ガッカリしていました。もちろん、私も申し訳なく、ガッカリもしました。ただ、これまで食べないから、何も起きなかった訳で、園や家で誤って食べてしまえば、アナフィラキシーは起こしたかもしれないのです。残念な結果でしたが、「現実」は見て頂けたと思っています。

お母さんの中で、卵は「敵」という考えが広がったと思いますが、「また機会をみて、もっと薄く卵を含む加工品で挑戦しましょう」と言い続けていました。最初は、もしかしたら「卵なんて一生食べなくてもいい」なんて思っていたかもしれませんが、勿論そうではありません。

1年ほどして、ビスケットで負荷試験をして「卵は食べられるんだ」という自信を持って頂けました。つい最近では、カステラまで食べられるようになっていました。

実は、この患者さんはN市から下越地方の別のN市に転居されていました。まだ卵料理などは除去しており、通っている園に食物アレルギーの診断書を提出したら、卵は「完全除去」となってしまったのだそうです。今いる市ではこのような方針のようです。私から言わせれば、卵料理といった濃いものだけ除去して頂ければ良いくらいなのに、「完全除去」とは過剰な対応ではないかと思っています。子ども達のために、もう少し努力すべきだと考えるのです。

ぜんそくは近くの小児科に通っており、食物アレルギーの相談をしてみたのだそうです。「田中先生のところに行っているのだから、相談してみたら」と言われたそうです。当院からは120キロ離れているので、あんまり気楽には通えない距離ですが…。

カステラを食べてアナフィラキシーを起こしてから、かれこれ3年になります。この時点でアレルギー検査はクラス5まで落ちていました。まだ、多くの小児科医が「完全除去」を指示するような値ではあります。

ただ、カステラを実際に食べているのだから、「現実」は見るべきです。今の市の方針なのでしょうが、園では「完全除去」と言われています。私のハートに火がつきました。(つづく)