(昨日の続きです)
「卵料理を食べられることを確認すれば、「完全除去」じゃなくなるんでしょ!」、そう考えました。
個人的な考えでは、微量でアナフィラキシーを起こすケースは仕方ないのですが、カステラまで食べられるいるお子さんを「完全除去」にするのは可哀想です。園児は周囲が思っている以上に、多感だと思います。「何で私だけ食べられないの?」と淋しい思いをさせることは極力避けるべきでしょう。
園での誤食などのトラブルを避けるという意味なのでしょうが、園の職員や親御さんなどに過剰な除去を推奨しているように感じます。それならそれで、キチンと食物アレルギーに関して知識を持ってもらうよう市側が努力はすべきでしょう。過剰な除去からは、何も生まれないと思っています。
以前、ある学会の抄録に、県外のアレルギーが専門の開業医が負荷試験をやった場合、クラス4以上はなかなか行なえないと書いてありました。確かに開業医は、重かったり、面倒な患者は扱いたくないというのが本音でしょうが、当院の場合は周囲に専門医がいないので、多少のリスクは背負ってもやらざるを得ないのです。
今回の患者さんは、クラス5でしたが、できれば卵料理を食べてもらい、「完全除去」という対応から抜け出させたいと思いました。大袈裟な言い方かもしれませんが、「負けられねぇ」と思ってしまったのです。
母の機転で、当日はゆで卵と卵焼き(甘めの味付けとそうでない味付け)の3個分の卵料理が用意されました。ずっと除去していたので、本人が食べてくれないことを想定しての準備です。
最初は本人の希望で、ゆで卵を使うことにしました。少しずつ食べさせ、半分まで食べたところで、急に箸が止まってしまいました。「食べない」というのも、アレルギー症状だったりします。発赤もわずかに出て、咳も少しだけ出たりと、雲行きが怪しい感じもします。
この時点で明らかに中止という訳ではなかったので、食材を卵焼きに変更し、負荷試験を続行することにしました。結局、卵焼きを半分食べてくれました。発赤や咳も悪化はありませんでした。
ゆで卵半分と卵焼き半分で、加熱全卵を1個完食したことになります。多くの小児科医がクラス5では「絶対に食べられない」と思っているでしょうが、そうではないのです。そういう医師の元で指導されていては、多くの親御さんが「食べられない」と思っていますが、“洗脳”されているとも言えます。そうとは限らないのです。
微妙に症状が出てしまったため、すぐに「完全除去」を解除してもらう訳にはいきませんが、ほぼ卵アレルギーは克服しつつあると言えると思います。家でも卵料理を食べてもらい、何度食べても明らかな症状が出なければ、解除してもいいだろうと思っています。
「ハートに火がついた」という表現をしましたが、私自身が頭に来て、冷静さを失っている訳ではありません。これまでやってきた通りのことを、ある程度の自信というか確信を持って、負荷試験を実施しただけのことです。一応1個完食という今回の結果は、奇跡でも何でないのです。
自分で言うのも何ですが、県内の多くの小児科にかかっていては、こうはならなかったと思います。「完全除去」に甘んじていては、親御さんも周囲も食べさせる努力をしなくなってしまいます。現在は少しずつ食べてて慣れさせることが推奨されており、かかる医師によっては、子ども自身が「私は卵は食べられないもの」と思い込んでしまい、精神的に食べられない子になってしまうことすらあります。
先週末の感染症の講演の準備に時間やエネルギーを割いたのも、おかしな医療をやっている医師もおり、それを知って頂くためで、地元の小児医療のレベルを少しでも引き上げたいと「ハートに火がついた」からこそなのです。医師が自分の都合で医療をやっていては、その分野に知識不足だった場合、被害を被るのは患者さんです。
格好つける訳ではありませんが、ハートに火がつくことが私の原動力になっています。


