小児科 すこやかアレルギークリニック

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伝わったか
2012年07月05日 更新

昨日、仕事が終わって、あわてて高速に乗りました。

中越地方の某幼稚園に食物アレルギーの講演に行くためです。食物アレルギーは、乳幼児の間では5~10%の頻度で見られると言われており、かなり高頻度と言えます。

もともとその園には、私が診ている患者さんが通院しています。80キロの距離を、わざわざ上越まで時折受診して下さっています。逆にこちらから出向くことで、「こんな距離を通ってくれているんだ」という思いを感じることができます。

食物アレルギーは患者さんと医師の間では、大きなギャップがあります。医師はアレルギー検査の結果をみて、ひと言「食べないように」と言えばそれで済みます。患者さんはそれを何か月、何年も続けなければいけません。医師は「どうせ大きくなれば治る」と思っており、患者さんは「この先の見えないトンネルのいつまで続くのだろう」と絶望的な気持ちになります。特に母は、お子さんにはいろんなものを食べて、大きく、丈夫になって欲しいと願います。それに制約があるとなると、不安にならない方がおかしいのです。

確かに、重症で完璧に除去し続けなければいけない患者さんがいるのも事実です。私も食べさせてあげたくとも、食べられないことを確認している患者さんもいます。しかし、それはごく一部であって多くの食物アレルギーの患者さんが食べられるものを「食べてはいけない」と言われていたり、負荷試験さえ受ければすぐに食べられるものが増える方の方が圧倒的に多いのです。

残念ながら、患者さんが思う程、医師は親身になっているとは思えません。もし「何かしら食べさせてあげたい」、「いち早く除去を解除してあげたい」と思えば、負荷試験を勧めるし、自分ができなければ専門医に紹介するはずです。個人的には、患者さんがどれだけ苦労しているのか、小児科医は知るべきだと思っています。まともに目を向けようと思っていないとしか感じられないのです。小児科の分野の中で、両者の“すれ違い”が大きいのが食物アレルギーと言えましょう。

周囲に「食物負荷試験」をやっている医療機関があるにもかかわらず、紹介しない医師がいます。私は、医師のモラルの低下がそうさせているのだと思っています。医療って、もっと医師が「プロ」として患者さんのために全力を尽くすものと思っていましたが、医療の嫌な面をだいぶ見てきたせいか、私自身が“医療不信”に陥っています。食物アレルギーに全力を尽くせない医師が、他の分野に関してもお子さんについて全力を尽くしているのだろうか?と思ってしまいます。

多くの医師に食物アレルギーに興味を持ってくれと言っても、どうせ無理なのは分かっていますから、困っている患者さんはとても多いので、患者さんへの情報発信は続ける必要があります。

昨日ように食物アレルギーの勉強会があると、その園の園長の働きかけもあり、周囲の園から多くの参加がありました。その市では、つい最近アレルギー症状が誘発された時の内服やエピペンを預かることを決めたので、園の先生方は薬を飲ませるタイミングや副作用の有無など知りたいことは沢山あるはずです。

残念ながら食物アレルギーに関しては、多くの医師が適切でない指導を繰り返しています。その地域がいかに専門医が少なく、環境的に恵まれていないか、という“現実”を知って頂く必要があります。最近は経皮感作と言って、皮膚から食物が入り込んで、食物アレルギーを悪化させるという考え方も台頭しており、にもかかわらずアトピー性皮膚炎とも診断されず、治療も適切でないため、皮膚の状態が低空飛行を繰り返している患者さんも多く、もしかしたらそれが故に食物アレルギーをみすみす悪くしているかもしれないと思われる患者さんもいます。

多くの園関係者が、食物アレルギーは多くの小児科医が言うようにアレルギー検査で分かるものと“洗脳”されていますので、言わば“洗脳”し返さないといけません。当院は県内の小児科医の誰よりも食物アレルギーにこだわっているつもりです。例えば、数値が高いものは除去し続けていれば良いと思う方が多いでしょうが、それに反論できるデータを示せばいいのです。負荷試験も県内で一番多くやっていますので、幸い、自前のデータも増えてきました。アレルギー検査の値が陽性であっても、まだ小さな1歳であってもこれだけ食べられているという結果を示すことができました。

その街まで80キロ離れている訳ですが、80キロの距離を「大したことがない」と思う方と「とても行けない」と感じる方がいると思います。しかし、食物アレルギーは、毎日3食食べ、おやつもありますから、親御さんからすれば、いつ何時アナフィラキシーを起こしてしまうかと不安でならないはずです。そんな恐怖におびえ続けるのなら、そんなしょっちゅう通院する訳でもありませんから、「話を聞きにきて下さい」、「負荷試験をやってみませんか」と言いたくもなります。

昨日の参加者は20名弱でしたが、その下には多くの園児がおり、食物アレルギーの新しい捉え方の他に、私の熱い気持ちは伝わったのではないかと思っています。