私の知り合いの先生が、2年ほど前に開業されました。
いえ、新潟県の先生ではなく、アレルギーが専門で、私なんかよりは知名度の高い先生でした。以前、勤務されていた病院で、アレルギーの特定の分野に力を入れていておられました。
開業すると周囲に伝えた時に、日本の第一人者の先生方から何人からも「もったいない」とから言われたそうです。
「もったいない」という意味は、開業すると、一般診療や予防接種、乳児健診など、アレルギーの診療以外のことをこなさなければなりません。予想するに勤務医であれば、特にアレルギーに専念でき、研究なども更に力を入れることができるということなのだと思います。
確かに勤務医として診療や研究をこなし、一段落したところで開業する医師が多いように思います。開業すると、学会発表は若い医師の仕事(義務?)と思っているのか、発表する医師が極端に減るように感じています。
開業医は、入院施設を持たないため、重症だと病院に紹介して治療をお願いすることになるし、仮に珍しい病気であっても、診断をつける検査ができなかったりします。軽い患者さんを中心に診ることが多いので、より一層学会から遠ざかってしまうのでしょう。
世の中には、アレルギーで困っている子ども達は多く、外来は徐々に混雑し、前勤務先で週2コマやっていた「アレルギー外来」は予約が取りづらい状況になってしまいました。フッと開業すれば毎日アレルギーの子ども達を診ることができることに気付き、開業を思い立ちました。私の場合は、冒頭の知名度の高い先生よりは「もったいない」と思われることもなかったでしょう。
私の場合、結果として「もったいなかった」かと言えば、そうではないと思っています。勤務医時代より、自分の思うようなことができているように感じています。
特に今年は講演ラッシュで、小さいものを含めると30回以上食物アレルギーに関する講演をこなしています。医院を休診にして出掛けたこともありますが、これも勤務医時代は勤務先に確認しなければならなかったでしょうが、自分の医院のことですから、依頼があった時点ですぐさま返事ができます。身軽になったというか、フットワークが良くなったと言えるでしょう。
また、学校や園の職員が食物アレルギーの誤食時の対応をすることを文科省、厚労省が推奨していますが、それを受け入れるかどうかは、行政側に委ねられています。多くの行政が「はい、分かりました。明日から実施します。」という風にはなりません。専門的知識がなく、どうしていいかよく分からないと言うのが実情でしょう。
いくつかの市に働きかけ、先の対応を構築するお手伝いをすることができました。開業医であっても、充分可能でした。逆に、フットワーク良く、思い切って協力ができたと言えると思います。
また、先に述べた学会も、毎年2~3回は参加だけでなく、発表もしています。参加と発表では、労力が大きく異なります。特に参加すらしていない医師も多い中で、かなりのエネルギーを注ぐことで、発表という任務をこなしています。
食物アレルギーの分野で言うと、いま、学会で注目されている経口減感作療法は、開業医でやるには夜間のアナフィラキシーの対応などが難しいため、手掛けていません。それは、日本を代表する専門病院に任せておいて、私は開業医でもできることを研究したり、取り組んだりして、その成果を発表させて頂いています。
多くの医師が「研究もできないし、発表するネタもない」と言うのでしょうが、そんなことはないのです。それこそ「もったいない」話だと思うのです。
まもなく2013年となりますが、1月と4月に既に学会発表が決まっています。当院も開院して5年が経ち、自前のデータも揃ってきたり、日頃心掛けていることが、場合によっては他の開業の先生の参考になるのではと思っています。
「もったいなく」ならないように、他にも学会で発表しようかと考えています。


