昨日、診療中に福岡の恩師からFAXがありました。
「アレルギー疾患対策基本法」が可決されたというものでした。この法律の目的は以下のように書かれています。
この法律は、アレルギー疾患を有する者が多数存在すること、アレルギー疾患には急激な症状の悪化を繰り返し生じさせるものがあること、アレルギー疾患を有する者の生活の質が著しく損なわれる場合が多いこと等アレルギー疾患が国民生活に多大な影響を及ぼしている現状及びアレルギー疾患が生活環境に係る多様かつ複合的な要因によって発生し、かつ、重症化することに鑑み、アレルギー疾患対策の一層の充実を図るため、アレルギー疾患対策に関し、基本理念を定め、国、地方公共団体、医療保険者、国民、医師その他の医療関係者及び学校等の設置者又は管理者の資務を明らかにし、並びにアレルギー疾患対策の推進に関する計画の策定について定めるとともに、アレルギー疾患対策の基本となる事項を定めることにより、アレルギー疾患対策を総合的かつ計画的に推進することを目的とする。
こういう法律言葉って、分かったような分からないような…。ただ、アレルギー疾患を持つ患者さんの増加に伴い、バラバラだった対策を一本化しようとする狙いもあるようです。東京調布市の食物アレルギーの死亡事故もひとつの契機になっているようです。
この法律の理念として、「アレルギー疾患を有する者が、その居住する地域にかかわらず等しく科学的知見に基づく適切なアレルギー疾患に係る医療を受けるようにすこと」とうたわれています。
昨日も触れましたが、アレルギーは適切な治療をしないことにより、何度も悪化してしまうため、その都度受診させれば、“ビジネス”になってしまいます。まともに診断すらできず、いい加減なことを繰り返している医師も存在します。
また、先日もこんなケースがありました。
咳が長引くお子さんがいて、まずA小児科を受診したそうです。最終的に軽いぜんそくがあると言われたようですが、症状は改善しませんでした。お父さんがヨーロッパの某国の方で、その国ではぜんそくには吸入ステロイド薬が用いられるということで、B小児科に行ってそういった薬を出してもらったようです。
フルタイドといった吸入ステロイド薬が出されたようですが、吸っても改善がないため、当院を受診されました。いろいろ問診をしてみたのですが、驚いたことに、ぜんそくとは診断できない状況でした。
日本のルールでは、ぜんそくと診断するとまず内服薬を用いて治療し、それでも思わしくなければ吸入ステロイド薬を使うことになっています。一見、吸入ステロイド薬を使っても良いように見えますが、この薬はぜんそくと診断が確定でき、しかも重い患者さんに使うべき薬です。ぜんそくの診断基準も満たしていないのに、重症な患者さん用の薬が処方されてしまうことに違和感を覚えます。
ヨーロッパの某国では、多分大人を中心に吸入薬が処方されるのでしょうが、患者さんが希望したからといって吸入ステロイド薬を出してしまう医師も医師でしょう。しかも、患者さんはまだ小さいお子さんです。
ここは日本なのですから、「郷に入っては郷に従え」のことわざ通り、日本のガイドラインに沿った治療が行なわれるべきです。先程のアレルギー疾患対策基本法の理念のところで触れたように、地方であっても科学的知見に基づく適切な医療が行なわれるべきとされますが、そうされることさえ不可能な状況と言っても過言ではありません。
父の母国ではセカンドオピニオンが日常的に行なわれているのか分かりませんが、日本というか、上越の地ではほとんど期待できません。医師は自分に手に負えなくても、当院に紹介されることはほとんどないからです。
この患者さんには、適応でない吸入ステロイド薬は中止とし、ぜんそくとは確定診断できない現状を踏まえて、適切であろう治療をさせて頂くことにしました。
アレルギー疾患対策基本法が可決されたことを受けて、これからいろいろと変わっていくのでしょう。正直、私も例えば上越の地で、どれだけ効力を持つのかはよく分かりません。
確かにぜんそくやアトピー性皮膚炎、食物アレルギーなどで困っている患者さんが大勢いらっしゃいますが、ガイドラインがほとんど守られておらず、“誤診”も繰り返され、症状が改善せず困り果てて当院を受診する患者さんが後を断ちません。
おかしなことをしても何らペナルティもなく、医師がおかしいとも思わないため、患者さんが疑問に感じて当院に鞍替えされています。法律うんぬんという問題ではなく、私から言わせれば、一番は医師のモラルの問題だと思っています。
今回の法律可決を受け、少し期待している自分がいます。しかし、「いや、大して何も変わらない」と疑う私もいます。“医師が変わる”ことが一番重要だと思うからです。
私には、自分の専門分野を活かして、新潟県内の患者さんに適切であろう医療を提供していくことしかできませんが、この法律が新潟県に及ぼす影響も冷静に見極めていこうと思っています。


