小児科外来は、一般的には風邪や胃腸炎などちょっと体調を崩したお子さんが受診することが多いと思います。
これらは、多くがウィルス感染なので、特効薬がありません。ハッキリ言ってしまえば、積極的に医師としてやることはなく、咳止めや整腸剤、解熱剤などいわゆる対症療法で乗り切ることになります。
以前読んだことのあるのですが、小児科を受診する理由の最多が「発熱」で、二番目が「咳」なのだそうです。「咳」に対しては、“咳止め”で対応することになるのですが、ぜんそくには“咳止め”が通用しません。いつも言っている通り、風邪ではないので、風邪薬としての“咳止め”はあまり有効ではないのです。
ぜんそくの咳はとても特徴的で、時間を少しだけ掛けて診察すれば、風邪の咳と区別はつくことが多いと思っています。ところが、とても気になっていることがあって、多くの小児科では「効率重視」、「スピード重視」の医療が心掛けられているようで、ぜんそくの咳に“風邪薬”が延々と処方されたりしています。
当院でも、軽い風邪や胃腸炎と判断されれば、時間は掛けません。というか、掛かりません。たまにすんなり治らないこともありますが、多くは数日で改善傾向になるため、「良くなったら、再診は不要です」と言っています。
ただ、患者さんは症状が改善することを望んで受診されますので、良くならなければ主治医としての私の責任です。ですから、「良くならなかったら、教えてね」と言い、再診して頂いています。
小児科外来では、治る病気が多いので、良くなって当然なのです。初診時から数日後に再診され、問診票に「良くなっていない」と書かれていると、がぜん闘志が湧いてきます(笑)。
「咳」に関しては、「風邪だと思っていたのに、風邪じゃないんじゃないか?。ぜんそくが隠れているのではないか?」と考えたりしますし、「熱」が下がらなければ、「アデノウィルスなどの熱の続く感染症じゃないか?」とか「肺炎になっていないか?」とか考えるようにしています。熱が3日も下がらないと、「CRP」という炎症反応を調べるようにしています。
子どもの発熱の場合、多くがウィルスかばい菌によるものですが、CRPが低いか高いかで、どちらの感染によるものかおおよその見当がつき、治療に参考になるのです。
先日、隣の街から熱が下がらず、3日目になるという患者さんが受診されました。もともと軽いぜんそくがあって診ているのですが、熱があったりすれば地元の病院を受診することが多いと思います。40キロの距離を受診して下さったりすると、ある程度の原因を知り、速やかに症状が改善する方向に持っていく責任を感じます。
熱が続いている影響もあって、かなり咳も出ています。ぜんそくがあると、熱が出ることにより咳が悪化することが多く、熱の原因をできれば特定し、治療に結びつけることが大切だと思っています。
まず、熱が出てからの経過を問診し、咳が悪化していないか、咳き込み嘔吐はあるか、睡眠障害がないかなどを聞き出します。聴診をして肺炎のような音がしないかも確認します。ただし、音がしないから肺炎がないとは言いきれません。
まず、先程述べた「CRP」を採血して調べさせて頂くことにしました。診察室を出て頂き、結果が出るまでの数分隔離室で待機して頂きました。
結果は、6.4mg/dlと高く(正常は0.3以下)、ばい菌が悪さしていると思われる結果でした。ウィルス感染なら特効薬がないため、待つしかないのですが、ばい菌が悪さしているようなら抗生剤が有効となります。
診察時、のどが赤いことが気になりました。実は、アデノウィルス感染症も時折みられています。アデノウィルスの嫌らしいところは、ウィルス感染なのにCRPが高く、ばい菌が悪さしているようにみえることがあることです。
2回目診察室に入って頂き、CRPが悪かったことをお母さんに告げました。今回の発熱の原因がアデノウィルスである可能性も否定できなかったため、「アデノウィルスを調べさせて下さい」と言いました。綿棒でのどをこすり、それを検体として検査キットで検査します。これも数分で結果が出ます。また、隔離室に戻って頂き、結果が出るのを待ちます。
結果は、陰性。アデノウィルスではなさそうです。3回目診察室に入って頂き、結果を説明します。「では、発熱の原因は何だ?」となります。咳も多いので、肺炎が心配になってきます。肺炎の診断は胸のレントゲン写真を撮ることによります。
当院は2階にレントゲン室があるため、2階に移動しレントゲン写真を撮りました。4回目診察室に入って頂き、幸い肺炎の影がみられなかったことを告げました。その場合、気管支炎と診断となります。
最近、時々話題に出していましたが、ヒトメタニューモウィルスの可能性も考えました。熱が下がらない感染症のひとつです。これもウィルスなのですが、場合によってはCRPが高めに出ることもあります。ウィルス感染を起こし、弱った体にばい菌がシメシメと寄ってきて悪さする(二次感染)こともあります。
結局、アデノウィルスもヒトメタニューモウィルスも陰性でした。これまでの結果を踏まえてトータルに考えると、ばい菌によって気管支炎を起こしていそうだということが言えそうです。
CRPも高いため、それは病気の勢いが強いことを意味しています。治療をためらっては、こじれて入院してしまえば患者さんの迷惑をかけてしまいます。ということで、点滴から抗生剤を入れさせて頂くことにしました。内服よりはビシッと治療することができます。
点滴後、またまた診察室に入って頂き、上手くいけば翌日に熱が下がるが、下がらなければ再度点滴治療の必要のあることなどを説明し、帰って頂きました。それにしてもその日だけで5、6回診察室に出入りしたことになります。
当院の場合、他院で「効率重視」の方針により病気を見逃され、当院に駆け込まれる患者さんが後を断ちません。もっと効率のいい方法があったのかもしれませんが、効率重視で病気を見逃すよりは、よほどまともな対応ができたと思っています。
発熱が3日も続けば心配でしょうが、さらにぜんそくもあるため、熱が下がらなければ咳はもっと悪化し、夜も眠れなくなってしまいます。そのお子さんのぜんそくを診ている主治医としては、熱の原因である感染症を特定し、速やかに治療し、改善させる義務があると考えています。
一般的な開業医では、5回も6回も診察室に入ることはないのかもしれませんが、私のやり方では特別なことをしたとは思っておらず、当たり前のことをやったとしか考えていません。
「効率重視」の医療が、日本の医療をダメにしていると感じています。効率を重視するのは医院の都合であって、症状の改善していない患者さんには関係のないことだと思っています。重視すべきは、「治ること」でしょう。
せめて症状の改善していない患者さんには、「効率重視」の医療は捨てて、手間をかけて頭を使い、じっくりと向き合う医療が必要なのではないでしょうか?。


