小児科 すこやかアレルギークリニック

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とにかく不機嫌
2015年07月28日 更新

ちょうど2年前の7月の終わりに小児アレルギー学会が、一般向けエピペンの適応と公表しました。

これまで専門医であってもエピペンは「迷ったら打て」と分かったような分からないようなことを言っていました。我々は迷うだけの知識があるのですが、一般の方は迷うだけの知識もないため、「よく分かんないなー」と思っていました。

そこで学会側は下記に示すように具体的な13症状を挙げ、この時にエピペンを打つ指標にしました。概ね、受け入れやすいものだったように思います。

全身症状
○ぐったり、○意識もうろう、○尿や便を漏らす、○脈が触れにくい、○唇や爪が青白い
呼吸器症状
○のどや胸が締め付けられる、○声がかすれる、○犬が吠えるような咳、○息がしにくい、○持続する強い咳き込み、○ゼーゼーする呼吸
消化器症状
○我慢できない腹痛、○繰り返し吐き続ける

個人的には、のどや胸が締め付けられる、息がしにくいというのは、本人しか分からないことであり、となると本人の訴えが重要で、別にもっと良い表現があるような気がします。低年齢の子はなかなか表現ができないと思います。

先日、小麦の負荷試験を行いました。まだ1歳の赤ちゃんでしたが、小麦を完全除去していると、うどんやそうめんのほか、パンやクッキーなどお菓子の類いを食べることができません。卵や乳製品よりは大変なんだろうと思っています。

小麦はなるべく早く解除したいと思っており、この患者さんにも同じ思いを抱いていました。うどんを使って開始したのですが、まもなく症状が誘発されてきました。

両まぶたを中心にボコボコと蕁麻疹が出てきました。冒頭に示した呼吸器や消化器の症状は出ていなかったため、抗ヒスタミン薬で治療しようと内服させましたが、とにかく不機嫌で、じんましんも広がってきます。全身症状としての、ぐったりや意識もうろう、唇や爪が青白いなどの症状も見られていません。

開始まもなく少量のうどんで誘発されているので、結構重症な小麦アレルギーであることが分かりました。点滴も併用することにしましたが、その間ある決断をしました。「エピペンと同じ成分の注射(アドレナリン)を使おう」、そう思いました。

泣き続け、とにかく不機嫌な状況を打破するため、また後手後手に回っても困るので、アドレナリンを太ももに注射させて頂きました。

アドレナリンは数分で効いてくるのが常ですが、徐々に機嫌も良くなり、母乳も飲むようになりました。親御さんに聞いても、注射をしてから明らかに症状が改善してきたとおっしゃいます。

当院は、積極的に負荷試験を行っていますが、アドレナリン注射を行ったのはどうでしょう、1年ぶりくらいかもしれません。かなり攻め込んだ負荷試験をやっているつもりですが、患者さんを危険な目にあわせることはほとんどありませんでした。

1歳そこそこの赤ちゃんにも負荷試験は積極的に行っていますが、今回のようにとにかく不機嫌という状況は、だいぶ前ですが過去にも経験はあります。学会の推奨する13の緊急性の高いアレルギー症状の中に含まれておらず、正直アドレナリンの使用を迷いましたが、注射後の改善具合いをみると、使用は適切だったと考えています。

私は、自分の中で起きている症状を伝えることができない赤ちゃんの場合、「とにかく不機嫌」というのもアドレナリン注射の適応に加えてもいいのでは?と考えています。

確かにエピペンは体重が15キロ以上のお子さんに処方されるべきもので、今回のように体重が10キロに満たない赤ちゃんには、処方のしようがありません。ただ、アナフィラキシーを起こして病院に担ぎ込まれるのは、エピペンが処方されない15キロ以下の赤ちゃんもいる訳で、医師向けのアドレナリンの適応を作るべきで、「とにかく不機嫌」という項目も必要なんだろうなと思っています。