伝統の継承というと聞こえはいいですが、そうではないという話をひとつ。
世の中にはアレルギー検査の数値が陽性ということで悩んでおられる親御さんが多いのですね。80~90キロ離れた街から受診がありました。
多分、小児科医の頭を悩ませるケースのひとつは、赤ちゃんのジクジクする湿疹だと思います。キンダベートなどを出されても、ちょっと良くなっては悪化しての繰り返しだと思います。
「小児科の頭を悩ませる」と書きましたが、治らないことに慣れてしまって、“何となく”診ている医師がほとんどだと思っています。当院に逃げてこられる患者さんのほとんどが、こんな感じです。「絶対によくしてやろう」という気持ちなんて伝わってきません。
その一部にアトピー性皮膚炎が含まれていて、荒れた皮膚から食べ物が入れば「経皮感作」を受けて、食物アレルギーが悪化してしまうと言われています。湿疹から食べ物が入るため、その湿疹の修復を急がねばならない、私はそういう認識でいます。
この患者さんも“何となく”というか、“のらりくらり”と診られていて、アレルギー検査をやる頃には卵もミルクも小麦も陽性になっていました。そして「インタール」という内服薬が出されていました。例の食前20~30分前に飲ませるという、手間のかかる薬です。
ちなみに、どう見てもアトピー性皮膚炎なのに、やはり“乳児湿疹”と誤診されていました。明らかに過小診断、過小治療でした。さらに、当院ではまず処方しない「インタール」が延々と処方されていました。どうしてこんな手間のかかる、親御さんにストレスのかかる、適応でない薬を出すかなと思います。
「インタール」という薬は、アレルギーが専門でない、ベテランの小児科医が出すことが多いようです。最近は減ってはいますが、未だに時々みますし、即刻中止していただいています。症状が悪化したケースは一例もありません。つまり、飲む必要がなかったと私は判断しています。
私が医者になりたての頃は、私も処方したことがあります。もう20年も前の話です。でも、現在は継続処方しているケースはありません。使い方を間違っているケースは、時々見かけます。いつも言っているように驚くほど企業努力をしてない医師は残念ながら存在しており、20年も前の治療を延々と繰り返していたりします。
特に開業医は「いまはそんな薬を使わないんだよ」と誰も教えてくれないので、そんなことが繰り返されています。これって相当問題のあることだと思いますし、医院の利益が上がってしまうことも、別の意味で問題があるでしょう。
今回問題にしたいのは、おじいちゃん先生が処方しているのならまだしも、あえて言いますが、40代の女性医師が処方していることです。
40代といえばまだまだ向上心もあるでしょうし、ましてや子どもの食事の苦労を知っているはずの女性が適応外のケースに処方し続けていたことです。
その先生が研修医の頃に、指導医から教えられたことをそのまま何も考えずに処方しているのでしょう。悪しき習慣が「伝統の継承」という形で続けられているようです。この40代医師も開業医になる前は、指導医として若手に指導していたでしょうから、30代の若手らに継承されていることを危惧しています。
インタールを処方している医師たちが「この薬、本当に必要なんだろうか?」と自らに問いかけて欲しいと思っています。


