毎週水曜日は、講演活動に明け暮れています。
今後は長岡市や小千谷市、新発田市にも行く予定があります。水曜ではありませんが、午後を休診にして新潟市にも行かなければなりません。
開業医は、来院患者が多ければ潤うし、少なければ死活問題となります。できるだけ多くの患者を集めたいというのも本音だと思いますが、当院の場合は、お陰様でというか、経営のことは全く考えていません。とにかく数を集めることに集中すれば、無責任な医療を繰り返すことになり、そこには小児科医としての“良心”はなくなります。
多分それなりに多くの患者さんに恵まれており、県内の小児科の医院の中でも、いわゆる患者数は多い方なのかもしれません。診療だけでも毎日疲れないはずはありません。
忙しくて「食物負荷試験」をやる時間がないと言えば、言い分としては通るのかもしれませんが、自分が自分じゃなくなるようで、それはできません。
講演活動も、「診療が忙しい」、「一日に百何十人も患者さんを診ているので…」と言えば、多くの園や学校関係者の方が「残念だけど、頼めそうもない」と思ってくれるのだろうと思いますが、既にライフワークになってしまっているので、どんなに疲れていようが、這ってでも行こうと思っています(笑)。
昨日も、市内の園に講演に行き、その後医院に戻り、あるメディアから取材を受けました。講演が終わったのが17時45分で、園長先生から「お茶でもいかがですか」とお誘いを受けたのですが、「取材があるので」と丁重にお断りしました。18時から取材で、まさに分刻みのスケジュールでした。
毎回、エピペンを処方している患者さんの通う園や学校に出向いて、誤食時の対応について話をしています。今回は“エピペンを処方できない”患者さんの通う園に行ってきました。
この患者さんは2月に当院を初診しています。それまでは食物アレルギーに詳しくない小児科さんに通っていました。根拠のない除去を指示されていたり、いつも言っているように「食物負荷試験」の存在すら親御さんに知らせていませんでした。
敢えて言えば、「よくも上越市内でそんなことできるな」と思います。開院以来、上越市内で食物アレルギーの啓発活動にも力を入れており、その結果として多くの園や学校関係者が「どの小児科医が食物アレルギーに詳しく、誰が詳しくないのか」は知るようになってきています。知ったかぶりをすれば、自分で自分の首を絞めてしまいます。ちなみに、アトピー性皮膚炎もありますが、見逃されていました。
いずれにしても、その後は当院で診ています。この患者さんの特記すべきこととして、牛乳アレルギーが重いということが挙げられます。脱脂粉乳入りのウィンナーを食べて、呼吸器症状が出たことがあるのです。
それから時間が少し経っていたので、乳製品を少し含む加工品なら食べられるのではないか?と考え、負荷試験をやることにしました。
いわゆるミルククッキーを持ってきて頂き、1/4枚を食べさせてみると、早速じんましんが少し出ました。続行し、更に1/4枚を食べました。つぎは1/2枚としたら、じんましんが広がり、くしゃみと鼻水が出てきました。じきにゼーゼー言いだし、アナフィラキシーと診断し、エピペンと同じ成分の注射を必要としました。
足し算して頂くと分かるのですが、ミルククッキーを1枚食べただけでアナフィラキシーを起こしたことになります。このミルククッキーには牛乳が1mlも含まれていない計算であり、これだけ微量で危険な状況に陥りました。
当院は積極的にエピペンを処方して、更に冒頭に述べたようにそういった患者さんを守るために、その子の通う園や学校に出向いて指導しています。当院で負荷試験をやって意外にもアナフィラキシーを起こしてエピペンを処方するケースもあります。
このお子さんもこれだけ微量でアナフィラキシーを起こし、アドレナリンの注射を要したのでエピペンを所持した方がいいと考えました。しかし、私にはエピペンを処方できませんでした。なぜなら、体重が軽過ぎて適応範囲外と判断されたからです。
では、他に何もできないかと言えばそうではないと思っています。エピペンは持っていませんが、この子の通う園に出向き、負荷試験の様子を話すことで、重症度を理解して頂くことも大切だろうと考えたからです。
調布市の死亡事故の件は、学校側がどれだけ患者さんの重症度を理解していたのかなど、詳しいことは分かりません。負荷試験を受けたことがあるのかさえも情報がありません。ただ、例えば今回のように「この子は牛乳1mlでアナフィラキシーを起こした」と具体的に言われれば、重症度がつかみやすく、絶対に誤食させてはいけないというモチベーションにつながるのではないかと思っています。
ということで、お母さんに園側に打診して頂き、昨日の勉強会が実現しました。園側も受け入れてくださり、有り難いことだと思っています。
なお、普段は講演の際にエピペンをトレーナーを使い、打つ練習をして頂いていますが、今回はエピペンを処方していませんので、そこまでやる必要はないと考えました。でも、思い直してやってきました。
何故なら、体重という条件を満たし次第、エピペンを処方するつもりだからです。園の先生方は、いずれ処方される日に備え一生懸命練習してくださいました。
また一つ、上越市内で食物アレルギーに理解のある園が誕生しました。来年以降も他の食物アレルギーを持ったお子さんが入園してくるでしょうし、エピペンを持っているかもしれません。
目先としては「○○くんのため」の勉強会だったかもしれませんが、それは今度入ってくるであろう子ども達のためになります。園の先生方の“財産”になってくれるよう願っています。
1年中水曜の午後など身体を休める間もなければ困りますが、やっていることは新潟県内の食物アレルギーの理解を深め、対応を知ることにつながっていると信じています。


