先月の話になりますが、ネットであるニュースを見つけました。
「コロッケ食べた男児入院 10年以上前から違反 アレルギー表示漏れ」という記事のタイトルに目が止まりました。
記事によると、佐賀県内の業者が九州6県のコープで販売していたコロッケを食べた7歳の男の子がアレルギー症状を訴え、2日間入院したのだそうです。佐賀牛を使ったコロッケで、10年以上前から食品衛生法に違反し、原材料の欄に「乳」と記載していませんでした。ちなみに、業者は「表示は必要ないと思っていた」そうで、認識不足が明るみになりました。
ここで思ったのが、10年以上前から違反していて、被害を受けた患者は1人だけなのか?と言うことです。
近年、食物アレルギーで入院する患者さんが増えているという報告もあります。新潟県内には食物アレルギーの専門医が極めて少ないため、当院には重症な患者さんが集まります。微量な乳成分でアナフィラキシーを繰り返すお子さんもいます。多分、当院で診ている患者さんも、このコロッケを食べたら、症状が誘発された可能性が高いと考えています。
総菜としてのコロッケは多くの人々の口に入るでしょうから、1人だけとは信じ難いものがあります。もしかしたら、乳が含まれていることに気付かず、原因が分からないとされた患者さんもいるのかもしれません。つまり、泣き寝入りということです。
もう一つは、業者の認識が甘い傾向にあるということです。以前も書きましたが、私の患者さんが実家のある某市で米粉パンを食べました。重症な小麦アレルギーがあり、「小麦不使用」の表示に「これなら食べられる」と思い、食べたらアナフィラキシーを起こし、入院を余儀なくされました。
米粉だけでは、パンや麺特有の粘り気を出せないため、小麦由来のグルテンを20%ほど入れているケースが多いそうです。この患者さんもそのためにアナフィラキシーに至った訳ですが、このグルテンを小麦の成分と分かっていない業者すらいると言います。人の命を何だと思っているのでしょうか。
特にアレルギーは医師の間の知識や技術の差が大きいことを患者さんに知って頂きたいがために、その事実をこの場で訴えています。残念ながら、食品業界でも同じことが言えます。
一流企業で、アレルギー対応食品を作っているところもあります。話によると、あまり利益は出ないようですが、食品のプロとしてのプライドが、仮に不採算でもそうさせているのでしょう。一方、今回挙げた総菜業者は、勉強不足で10年以上も知らなかった訳で、言い訳にもならないのです。
昨日も言ったように、自分の学校の児童を守るために勉強し、エピペンをいつでも打てるように準備している養護教諭の先生もいると思えば、「アレルギー科」の看板を掲げているにもかかわらず、アレルギー検査の値のみで除去を指示する小児科医もいます。
食物アレルギーは病気ですから、本来リーダーシップをとるべき医師、しかも食物アレルギーは小児に多いため、小児科医がしっかりしていなければならないのに、こんな状況です。話によると、栄養士の養成施設でも食物アレルギーはあまり踏み込んでやっていないようです。
現時点で、店頭販売ではアレルギーの表示義務はなく、患者さんが店側に確認するしかないのですが、場合によっては、アルバイトの人にそこまでの理解がなく、間違ったことを言われるかもしれません。特に重症な食物アレルギーの患者さんにとっては、現状はかなり危ういものだと言わざるを得ません。今回の表示漏れについても、氷山の一角と思われます。
食品業界における食物アレルギーの対応については、改善を望みたいのですが、残念ながら、すぐには何も変わりそうにないと思っています。


