自分が開業医になってみて、つくづく医療には様々な問題があることに気付きます。
保険診療では、一人でも多くの患者を診た方が有利なため、患者さんの症状が良くなっていなくても、同じ薬を出して「これで様子をみて下さい」と言われれば、患者さんは「はい、分かりました」としか言えなくなります。結局、医師のペースで診療が進んでしまい、あっという間に終わってしまうということが繰り返されています。
良くなっていないのに同じ薬を出すのは、私は不誠実だと思っています。患者さんもそれに気付くべきです。充分な説明もしてもらえない上に、症状も改善しないなんて目も当てられません。
特にアレルギーの場合は、慢性疾患のためすぐには治りません。ただ、例えばアトピー性皮膚炎なら1週間で驚く程に皮膚症状を改善させるのは、さほど難しいことではありません。ぜんそくも、比較的短期間で発作を起こす頻度が減ります。
当院に遠路遥々受診される患者さんの多くが、診断が間違っている、治療が適切でないという明らかに医師側に問題があります。残念ながら、これが現実です。明らかにその医師に“手に負えない”状況にあるのに、専門医に紹介もされていないので、患者さんが気の毒でなりません。
多くの患者さんが、医師を信じて通っていますが、もっと患者さんに「本当にその医師がアレルギーに詳しいのか?」ということをよく分かる指標となるものが存在しなければならないと思います。患者さんが専門医でもない医師を“一方的に信じているだけ”なんて状況はよくあることです。
敢えて言えば、専門的な知識を持ち、なおかつ良心的に、時間をかけて対応してくれる医師でなければ、よい医療は提供できません。当院には新潟市や長岡市などからも患者さんが来られますが、少なくとも前医が専門的な知識を持っておらず、ガイドラインがあるにもかかわらず我流の治療を行なっており、しかも時間もかけない診療が繰り返されています。
普段、診療していて「こんなに説明してもらったのは初めてだ」とよく言われますが、もしかしたら、新潟県では特異な存在と言えるのかもしれません。アレルギーを持つ子どもは多く、それだけ困っている患者さんは多いはずです。
私は学会にも参加して、自ら発表することも多く、そういった場で日本の第一人者の先生や同じ志を持って頑張っている先生と触れ合う機会も多いのです。こういう先生方は、私と同じようなスタイルで診療していると思います。もっとそういう医師が多くなければいけないはずです。
アレルギー専門医なら、アレルギーに興味があるからより深く勉強している訳で、困っている患者さんを見ると「オレが何とかしなければ」と考えると思います。そういう意味では、日本アレルギー学会が認定する専門医が、アレルギーの専門的知識を持っているかどうかの判断材料になります。
ただ、私の力の入れている食物アレルギーの診療に不可欠な「食物負荷試験」は、先の専門医なら誰でもやっているかと言えば、そうではありません。やっていない医師の方が多い程です。私の信頼している、負荷試験をやっている先生が一人いますが、専門医の資格はまだお取りになっていないようです。
となると、アレルギーの専門かどうかを患者さんの立場から知る術はないということになってしまいます。
言い忘れていましたが、「小児科・アレルギー科」の「アレルギー科」は、自由標榜のため、専門医であることを表していません。地域差があるようで、他の県では本当に専門医しかアレルギー科を標榜していないそうですが、新潟県は小児科とセットのように扱われています。アレルギーの専門医であることを意味していません。
中には、地元の大きな病院にかかっているから安心と思っているかもしれませんが、大きな病院にアレルギー専門医がいるかと言えば、いないことの方が多いのです。その辺も理解が広まっていないように思います。
遠路遥々当院に来られる患者さんが、友人の患者さんに当院を紹介しても、思い切って来られる方は多くありません。何でも完璧に対応できる訳ではありませんが、私が治療すれば、もっと良くできる患者さんは大勢いるはずです。ただ、診察しないことには何も始まりませんから、重い患者さんがいるという話を聞いても何もできず、歯がゆい思いをすることも結構あります。
先に述べたように、最近は新潟市や長岡市から受診される患者さんもいらっしゃいますが、それはある意味、氷山の一角とも言え、「これ以上は仕方ないんだ」とお子さんに我慢を強いている親御さんも相当数いるはずです。
同業者の紹介が専門的な医療の一番の近道ですが、それもほとんど期待できないのが現状です。患者さんに分かりやすい、専門医の判断材料がないことも救える患者さんを救えなくしているのだろうと思っています。


