小児科 すこやかアレルギークリニック

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関西から
2012年04月02日 更新

4月になりました。

先週の土曜は、やはり春休みで受診しやすいせいか、市内外からアレルギーでお困りの患者さんが多かったでした。

病気は軽いものから重いものまであります。私の場合、原因が分からなければ、分かる努力をしているつもりです。つまりいろいろと話を聞いて、何かヒントがないか、自分が聞き漏らして分からないだけなのではないかと考えます。

逆に、分からなければ、治療方針も立てられない訳です。情報不足であれば、どういう時に症状が出るのか、親御さんによく観察してきてもらったり、どうしても自分の手に負えなければ、その道の専門家に紹介状を書いています。

患者さんは病気の症状を改善させたくて受診しています。改善させてくれるのはその医師でなくとも、別の医師でもよいはずです。医療が細分化し、1人の医師にできることに制限があるため、紹介状を書くことは恥ずかしいこともでも何でもないはずです。

こんな当たり前のことができない医師もおり、嘆かわしい限りです。日本人のモラルの低下が叫ばれておりますが、日本人である医師も同じなのかなと思っています。

その日は、仕事が終わったら苗場に出掛ける用がありました。苗場は、新潟県の誇るスキーのメッカです。原因は特定できていませんが、アナフィラキシーを起こした患者さんが相談に来られ、食べ物を中心にいろいろ聞いても、ピンと来るものがありませんでした。あれこれ聞いたり、不安を減らすためにいろいろ説明しているうちに、だいぶ時間がかかってしまいました。

咳の長引く患者さんも初診されましたが、前医でなぜかステロイドの内服が出されていました。普通、小児科医がステロイドの内服を使うとすれば、呼吸困難を伴うクループの時や、ぜんそくの重い発作の時でしょうか。そのどちらも違う状態でした。ハッキリ言って、意味が分かりません。

熱が続くと、デカドロンという強いステロイドを点滴に入れる小児科医もおり、これもまともな小児科医はまず使いません。残念ながら“無法地帯”のような医療が時として行なわれることもあり、親御さんも自分の子どもを守るためには、ある程度は医師の治療に問題意識を持つべきでしょう。

おかしな医療が行なわれていれば、「それは違う」と言うようにしています。小児科医は子どもを守るのが仕事だからです。もちろん、致し方ない状況であれば、かばうというか、何も言わないことも多々あります。小児科医として我慢ならない時には違うと言わざるを得ないし、言わないことはその医師のためにもならないと考えます。この辺に残る、医師の“一方通行”の医療はそろそろ終わりにしなければならないと思っています。

当院から苗場までは2時間はかかります。診療が13時に終われば、15時か遅くとも16時には着くなと思っていたのですが、結局診療が終わったのが14時でした。それから慌ててご飯を食べ、雨の中、苗場に向けて出発しました。

車を走らせスキー場に近づくにつれ、雨がみぞれに変わり、それが雪に変わりました。当院周辺はあれだけ多かった雪も、ほとんど解けてなくなっています。さすがに新潟県は広いなと実感しました。と同時に、その土地の高速のインターを通り過ぎると「あの患者さんはこんなところから来てくれているんだ」と思ったりもします。

今回の目的は、東京のアレルギーの患者会のイベントであるスキー旅行の引率です。重症な食物アレルギーのお子さんもいますので、アナフィラキシー時の対応、ぜんそく発作の手当を任されています。

結局、着いたのが17時過ぎ。一行と合流しました。実は苗場周辺は小児科医のいる病院がありません。時に話題に上る、大きな街に医師が集まるという「医療の偏在」は、県内の小児科でも当てはまるのです。もし入院が必要なくらいの状態になれば、何十キロか離れた病院に駆け込まなければなりません。だからこそ、私に声がかかったのです。

実は、重症な食物アレルギーのお子さんは“外出”に苦労します。なぜなら、アレルギー対応の食事を出す施設がほとんどないからです。重症であればある程、不可能に近く、ましてや“外泊”なんて夢のまた夢と諦めている親御さんも多いのです。

そういう意味では、今回の企画をされ、実践してくださった親の会の代表の方には頭が下がります。過去に同様なイベントを開催されており、子ども達が家に帰りたがらずに四苦八苦した話なども伺いました(笑)。

事前に重症な食物アレルギーの患者さんの禁止されている食材や現在の治療を記した資料を頂いていたのですが、一見して分かるその重症さにこちらも緊張感が増してきました。本人もご家族も、不安もないはずはありませんが、大きな期待を胸に一家で出掛けて来られたのだろうと感じました。

食事はアレルギー対応ではありましたが、何か起こると大変です。夕食の時間になりましたが、私は救急薬や吸入器を机の脇においての参加となりました。食事にはアレルギー対応の業者さんが入ってくれたのですが、しっかり対応してくださりました。食物アレルギーのない大人も、子ども達と同じもの食べることになっています。

アレルギー対応食と言うと味気ないものとお思いかもしれませんが、「ところがどっこい」という感じです。滅多に外食もできなかった子ども達が嬉しそうに食べる姿を、暖かい目で見守る家族という姿がとても印象的でした。

夕食が終わって暖炉を囲んでたい焼き(これもアレルギー対応)を焼いて食べるということもあったのですが、その時にある女性が私が小児科医だと気付き、話しかけてこられました。

なんと関西からの参加だそうです。イベントの2日前に今回、アレルギー専門医が同行すると聞いて、飛び入りで参加を決めたのだそうです。すごい行動力と感心させられました。お子さんは10代後半で、アレルギーも重症で、食事の問題もあり、「何かあったらどうしよう」という不安でほとんどどこにも出掛けられなかったそうです。

アレルギーに特化したイベントということでも、新潟県という勝手の分からない地方に来るのは勇気が必要だったはずです。当然スキーなんてやったこともなく、期待の大きさを感じました。

私はその旅館に泊まり込みで参加しました。夜中にぜんそく発作で起こされることも想定していましたが、それもありませんでした。結局、夕食、翌日の朝食、昼食と3回食事を食べる機会がありましたが、何も起こりませんでした。完璧に対応してくださいました。

2日に渡りスキーができ、どのお子さんも初めてのスキーでしたが、滑られるようになったそうです。親子共々充実したスキー旅行ができ、思い出も胸に刻めたのだと思います。有意義な時間が親子で共有できたのが、端から見ていても感じられました。

結局、医師としての仕事は何もありませんでした。私の参加は意味がなかったのか?、そうではないようです。2日目のお別れの時に何人かの方から「安心して旅を楽しめた」と直接お礼を言われました。何もしませんでしたが、いるだけで少しは安心感を提供できていたようです。

このようなイベントの参加は初めてのことでしたが、今回の同行で、いろいろなことを学びました。当院で診ている重症なお子さんから外出などでご苦労されていることは聞いていましたが、より食物アレルギーの実態に触れられた気がします。

医院に来た患者さんを診察するだけが小児科医の仕事ではないことを実感しました。食物アレルギーは食事に関わる問題で、患者さんの生活に直結していますから、それを垣間みる機会を与えられたと思っています。

こんなイベントは全国的にもあまり行なわれていないでしょう。少なくとも医師の派遣を要請する必要はない訳で、思い立てばできないことはないと思いました。いつか当院でもできればいいなと思いながら帰ってきました。