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リンデロンVG軟膏
2011年12月12日 更新

「リンデロンVG」軟膏という塗り薬があります。

一方、「リンデロンV」という塗り薬もあります。「G」が付くやつと付かないものがあるのですが、これは「ゲンタマイシン」という抗生剤を含むか含まないを表しています。

軟膏は、大人も子どもも出されることが多いでしょうが、もちろん皮膚科と内科、小児科がメインだと思います。私の印象では、全国的に最も処方されている塗り薬ではないかと思っています。実際に医師から出されたという経験のある患者さんも多いと思います。

今はインフォームドコンセントと言って、患者さんに説明した上で薬を処方しなければいけないのに、「これを塗っておきなさい」なんて軽い感じで処方されているケースも多々あると思います。

ちなみに、この薬はステロイド軟膏です。ステロイドであることを説明もされずに、処方されているケースが多いのです。

当院はアトピー性皮膚炎の患者さんを多く診ていますが、「ステロイド」という言葉に過敏に反応される親御さんも未だに少なくないと思っています。アトピー性皮膚炎の場合はステロイドを上手に使って、皮膚症状をコントロールしていく必要があるので、当院ではステロイドに関する不安を取り去る努力をしています。だからこそ、医師から説明もなく処方されている現状に違和感を覚えています。

さらに、誤使用も結構目立ちます。先日、ある小児科で風邪と診断されていた患者さんが、熱も下がらず、唇も荒れているということで当院を受診されました。実は、ぜんそくもあり、前医では見逃されていました。今回は「咳」ではないのですが、親御さんは、いつも何度通っても良くならないため、いつか医者を代えようと思っていたそうです。

こういう感じで受診される患者さんは、毎日のように受診されており、敢えて言えば前医の先生には、もっと頑張ってもらわないと思っています。当院は、特定の小児の医院さんの“下請け”ではないのです。

唇の荒れにも、冒頭のリンデロンVG軟膏が出されていました。私であれば、まだ小さいお子さんの顔にリンデロンという強いステロイドは使いません。多分、化膿していると思って、その薬が選択されたのだと思います。

これは一般の方でも感じていることでしょうが、口の中に傷ができても化膿することってまずないですよね?。唇の内側がただれたようになっていましたが、普通は「化膿」しないところです。にもかかわらず、リンデロンVG軟膏が処方されていました。

確かに、一部の皮疹を除き、大抵の湿疹にステロイドは有効ですから、効く確率は高いはずです。しかし、全く改善していませんでした。

「これはおかしい」と考えなければなりません。丁寧に診察するとヒントは、いくらでもあります。まず唇の病変は、よく観察すると水疱であること、口の中にも水疱はあり、歯茎が赤く腫れあがっています。

小児科医ならば、誰でも経験のある「ヘルペス歯肉口内炎」という病気でした。診察に時間をかけていないのが原因かもしれません。ヘルペスウィルスが原因の病気なので、アラセナA軟膏などのヘルペスの増殖を抑える薬を使うべきで、リンデロンVG軟膏は効くはずもないのです。

また、ある小児科で「オムツかぶれ」と診断され、やはりリンデロンVG軟膏が処方されている赤ちゃんが、改善しないと当院を受診されたことがあります。

オムツかぶれも、通常のオムツかぶれとカンジダ性皮膚炎の2種類があると思います。通常のオムツかぶれは、ステロイドが著効しますので、リンデロンVG軟膏が効かないはずがありません。

そう、この赤ちゃんのオムツかぶれはカビが原因で、逆にステロイドを塗ることで悪化させていたのです。私も、カビでないオムツかぶれだと分かれば、ステロイドを使うこともありますが、リンデロンVG軟膏ほどの強い薬は必要になったことは個人的にはありません。分かりにくいこともありますが、よく観察すれば、区別はさほど難しくなかったと思います。

アトピー性皮膚炎の患者さんにも、リンデロンVG軟膏が処方されていることもあります。アレルギー学会などで第一人者の先生の話を聞くと、リンデロンVG軟膏はあまり使わないことと言われることが多いのです。

何故なら、抗生剤が混ざっているので、菌がいないであろう皮膚に抗生剤を使えば、「耐性菌」が増えてしまうから、むやみに抗生剤を含む軟膏は使わないようにという意味です。

ステロイド軟膏の中でも、リンデロンVG軟膏は結構と気軽に処方されている印象がありますが、今回例を挙げてきたように、必ずしも適正に使われていないケースも目にします。

多くの湿疹に効果があるが故に、“過信”されている部分もあるのかもしれません。料理に「包丁」は欠かせませんが、使い方を間違えると指を切ったり、怪我のもとになります。リンデロンVG軟膏も切れ味の良い信頼できる“道具”ではありますが、適切に使って初めて恩恵に預かることができるのだと思っています。