先日、当院で診ている食物アレルギーのお子さんが、最近やたらとCMをやっている「リカルデント」入りのガムでアレルギー症状を起こしてしまいました。
それを書こうと思ったのですが、頭の大部分は24日の講演会のことなので、今日はまたそれについて書こうと思います。
そういえば、昨年の今頃も市内の園の先生方を対象に子どもの感染症の講演の準備をしていて、全く余裕のない状況でした。
アレルギーの話はよくしていますので、チョイチョイという感じ(?)で準備はできますが、「是非とも感染症の話をして頂きたい」という依頼があったため、最初は正直言って戸惑いました。
私がアレルギーの専門病院で学び、アレルギー専門医の資格を取得し、アレルギー科を名乗っているように、実は感染症に関しても、本当の意味での専門医は存在します。しかし、そういう専門医は、やはり県内にはごく一握りしかいません。地元にもいません。
ですから、感染症の専門医はいないけれど、小児科医の日常診療はほとんどが感染症といっても過言ではなく、小児科医のみんなが感染症の「専門医」と言えるのかもしれません。尚更、「何で私に…!?」と思いましたが、その時点で地元で診療を始めて3年経ち、アレルギー同様、感染症でも医院間でのレベルの格差を感じていたし、「必要のない抗生剤の点滴はしない」という方針を貫いてきたので、その辺が評価されたのだろうと考えて、引き受けることにしました。
感染症の講演はそれまでやったことがなかったし、スライドの準備も1枚もありません。日頃から医学的根拠のある医療をやることを目標にやっていますので、根拠のある話をしないといけないし、説得力を持たせるために、分かりやすいデータを探さなければなりません。
講演の日の1ヶ月前から準備を始め、苦しみながらその日を迎えたことを昨日のことのように覚えています。それから1年が経ち、今回は感染症といっても、呼吸器に限定されています。
昨年のスライドで流用できるものはそうしましたが、実はそんなに多くはないのです。何故なら、昨年は園児、今年は小学~高校生です。年代が異なると、かかりやすい感染症も異なります。例えば、いま上越の地で流行しているRSウィルスは、小学生以降がかかっても、単なる鼻風邪で終わってしまうので、話す必要がないのです。
一方、園児が比較的かかりにくいマイコプラズマやクラミジア肺炎の話は外せないし、耐性菌が増えているし、かなり問題のある検査法が普及しているので、その辺はじっくり話さないといけません。
今回、107枚のスライドを準備しましたが、実際に何も修正を加えずに流用したのは、3~4枚ほどでしょうか。一応、22日の朝に手元にお配りする資料用にとスライドデータを提出してあるので、有り難い23日の祭日はゆっくりするはずでしたが、そんな“開き直り”もできず、晴天の休日もほとんど家で講演の準備していました(涙)。
確かに、日々の忙しい診療の合間に、気合いを入れて講演の準備をするのは体には相当こたえます。予防接種も多く、当院は何百人も来るような医院ではないのに、そうだとかなりキツいのは確かです。
ただ、私は医院に来た人だけを診たいのではなく、“信じて通っても診断が間違っている”なんてことを結構目にしており、同じ過ちを繰り返している医師もいるようです。そうなると、私のやれることとしたら、患者さんのレベルを上げるしかないだろうと思うのです。
昨年の園の先生への講演の時にRSウィルスの話に力を入れました。外来で調べると医院の持ち出しになるせいもあり、あまり調べられていなかったので、地元ではRSウィルスの認知度が極めて低かったのです。わざとかどうかは分かりませんが、私が診ればすぐに分かるようなRSウィルスの症状でも、RSウィルスと診断されていないことも多く、地元の感染症情報にRSウィルスが流行っているとの情報が流されることもありませんでした。
それを指摘した甲斐あってか、今年からRSウィルスを調べてくれるようになった医院さんもあります。その調子で、今回はマイコプラズマの検査の信用性について、問題提起をするつもりです。
先日も書きましたが、愛子さまが熱と咳で東大病院に入院されました。私は9歳で起こしやすい肺炎と言えばマイコプラズマなので、マイコプラズマだろうと思っていました。そんな中、公表された診断名は「マイコプラズマ疑い」でした。端から見れば、東大病院を持ってしても、マイコプラズマの診断が確定できなかったことになります。
ところが、地元では「マイコプラズマです」と断定的に診断する医院さんもあります。実は、開業医が行なう「イムノカード」法は、診断の確定には使えないことになっているのです。マイコプラズマは従来からある検査法を頼ることになるのですが、病初期には抗体は上がってこず、治った頃に上がってくるため、その頃にならないと診断を確定できないのです。ですから、東大病院の言っていることは、とてもよく分かります。
地元の養護教諭の先生にこの事実を伝えれば、誤った診断は減ることにつながると思っています。場合によっては、マイコプラズマと診断されて、治療しても良くならなければ、医療機関を変えるようアドバイスもできると思います。ですから、この辺りは根拠を示し、一番と言っていいくらい力を入れて話してこようと思っています。
24日は呼吸器感染症だけでなく、ぜんそくの最新治療についても話さないといけません。これは話し慣れていますが、先日新しいガイドラインが発刊されましたので、スライドも新たに用意せざるを得ませんでした。
一般的には発作を繰り返した幼児は、小学校に上がると発作もあまり起こさなくなります。そういうお子さんは治るタイプなのでしょうが、小学生になっても発作を繰り返すようなら、治療を見直す必要があります。
また、反抗期を迎える思春期には、ぜんそく治療もいい加減になり、定期通院もままならず、発作を起こしてもメプチンエアーのような吸入薬で誤魔化す子も出てきます。ぜんそくの歴史上、過去に2回、こういう気管支拡張薬の乱用で喘息死が増えたという苦い経験が日本にはあります。
これも最近書いていますが、アドエアという“最強”の薬を軽症なお子さんに処方する医師もいます。過剰治療と言ってもいいでしょうが、アドエアにも気管支拡張薬が含まれるため、使い過ぎは良くなく、新しいガイドラインにも症状が落ち着いたらいち早く中止するように記載されています。
症状が落ち着けば薬を止めるのは、医師にとっても難しい判断だと思います。日々、気管支の過敏性を考えながら、丁寧に診療に当たらなければなりません。それでも症状が治まりにくければ、新しいガイドラインには「小児ぜんそく治療に精通した医師のもとでの治療が望ましい」と明記されています。
そんな患者さんも当院にはなかなか紹介されてこないので、その辺りのことを養護教諭の先生が知識として持っていれば、専門医にまわってくる可能性も高まります。私も専門でない、自信の持てない病気を扱う時は、ダメそうなら専門医に紹介状を書いています。本来なら、地域の医師が得意分野を持ち寄って、地元の子ども達を守らなければならないのです。
「もうちょっと準備の時間があれば」なんて思ったりしますが、いよいよ当日になってしまいました。
呼吸器感染症もぜんそくはありふれた病気であり、本当ならどの医師もガイドラインを参考に、かなりのレベルで診療できなければなりません。私の話す内容が「平均的なレベル」と思って頂いてもいいと思っています。それ以下なら、主治医の努力不足となるかもしれず、それくらいに地元のレベルが上がって欲しいと願っています。


