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乳幼児アトピー性皮膚炎の環境を知る
2011年04月26日 更新

最近、某国の首相が国会で被災地出身の議員から、震災の対応に関し「心がない」と批判されているようです。

医療も、根底にあるのは「心」でなければならないと思っています。地元ではビジネスライクにやっている医院さんも見受けられ、いろんな医師がいるんだなと思わされます。

誰でも病気になれば、不安になるもの。ましてや無事に産まれてきた赤ちゃんの顔に湿疹ができて、機嫌悪そうに掻いている様子を見るのは辛いものです。

当然、皮膚科や小児科に連れていく訳ですが、診断もされず、ただステロイド軟膏を出されるだけで、塗り方も医師によってバラバラです。言われた通りにやっても、改善せずに医療機関を転々とされる親御さんは少なくありません。母親なら、「できることなら代わってあげたい」と思うことでしょう。良くなってもいないのに、同じ薬を出し続けられています。

先日、あるお母さんからメールがありました。

地元の小児科や隣町の皮膚科で“湿疹”の治療を受けているが、良くならない。評判を聞いて、そちら(当院のこと)を受診してみたいが、キチンと診断してもらえるのか?、我慢させて、様子を見るしかないのか?。という内容でした。

それまで行ったいたのは有名な医院さんだったようですが、行っても2~3時間待たされて、3分診療だったようです。肝心の診療は、診断もなく、説明もなく、おまけに症状も改善せず、という状況でした。そんな状況で当院のウワサが耳に入ったようです。

もしかしたら、医師に不信感が芽生えてきている頃で、遠い当院に来ても同じだったら嫌だなと思い、メールで状況を伺おうと思われていたのかと思います。

ちなみに、アトピー性皮膚炎が見逃されていました。症状を抑えるだけの治療は選択されておらず、学会で推奨されているような塗り方の指導もされていませんでした。ステロイド軟膏が処方されていましたが、ステロイドを使う根拠も示されず、副作用などの注意点の説明も一切なし。

また、乳幼児のアトピーは食事の影響もある場合がありますが、そちらのフォローもなし。肝心の予後も、話されていませんでした。患者さんにしてみれば、何か明るい光が少しでも見えれば、頑張ろうという気も起きるのでしょうが、それもなかったのは残念と言わざるを得ません。

予後については、患者さんを勇気づけるデータが厚生労働省の班研究で得られているので、私はそのデータを使っています。敢えて言いますが、こんな感じでは、皮膚疾患の診療をしているとは思えません。もし目の前の患者さんを「良くしたい」と強く願うのなら、残念ながらこうはしないと思うのです。

乳幼児のアトピー性皮膚炎だけではないのですが、往々にしてアレルギーは流れ作業で診療が行われているように感じています。2~3時間待つなら、待っただけの価値のある情報を提供しなければ、意味がないと思います。

ちなみに、現在は私の診ている患者さんが、大人になって魚を食べると蕁麻疹が出るようになり、どの魚を食べても症状がみられるようになったため、その皮膚科に行ったそうです。2時間待って「魚は食べられません」の一言で診療が終わったそうです。悔し涙を浮かべて帰ってきたという話を聞きました。新患で行ったので、住所をみれば市外からわざわざ来たのは分かるはずです。申し訳ないですが、心のある医療とは私には思えません。

ここ最近は、1日に何件も「食物負荷試験」を行っています。アレルギー科を標榜する某小児科でアトピー性皮膚炎と診断され、卵を除去するように指導されていたお子さんに卵焼きの負荷試験を行いました。

この患者さんは、以前は母乳経由でのアレルゲンが悪化要因と診断され、「インタール」という抗アレルギー薬を母乳を与える20分前に飲ませるという指導をされていたそうです。母乳は1日8回与えることもあり、その都度「インタール」を飲ませていたそうです。

1日8回、20分前にと言うのは簡単ですが、実際にやる側に立ってみるとかなり困難であることは考えてみれば分かります。しかも毎日で、「いついつまで」という話もないので、親御さんにしてみればそれが永遠に続いてしまうという不安感はあったと思います。

こういう場合は、まず湿疹を治す治療を適切に行って、それでも悪化を繰り返す時に食事の影響を考えるのが普通ですし、それが順序です。1日に8回も飲ませる必要性があるのかどうかを明らかにすることが順序だと思っています。

当院を頼ってこられた時点で、インタールと別の抗アレルギー薬も出ていましたが、必要ないのではないかと考えました。実はこういう処方は少なからず行われていて、何度も中止しています。薬を止めて湿疹に悪化がなければ、飲み続ける必要がないと考えるべきでしょう。この患者さんも何も起きませんでした。

さらに、卵も除去を指導されていた訳ですが、確かにアレルギー検査は陽性でした。そんな状況で、先日負荷試験を行いました。予想通りに卵焼きをクリアしました。生や半熟に気をつければ、卵は制限の必要がないことが分かりました。

患者さんに無駄な労力を強いるべきではありません。それが医師のリーダーシップだと思います。いろいろと可能性を考えて対処することは大切です。ただし、「これは必要ないのではないか?」と思えば、止める勇気も必要でしょう。「心」があれば、無駄なことを減らす努力は惜しまないはずです。

私のやっていることがすべて正しいとは思っていません。ただ、そうしたいと思っています。乳幼児のアトピー性皮膚炎には、いろいろな要因が関与していると考えられていて、と同時に注意を払う点も多いのです。それを充分に理解していない小児科医、皮膚科医が多く、それを分かろうという努力をしている医師はアレルギー専門医くらいではないかと思っています。

専門的に努力している医師とそうでない医師の間には、大きな知識の差が出るのは想像に難くないと思います。残念ながら、医師は「分かりません」とはまず言いませんので、親御さんがある程度は学ばなければけないし、その医師の「医療」を見極めなければいけないと思います。

乳幼児のアトピー性皮膚炎を巡る環境は、これが現状と言えると思います。今日挙げたような、専門医が診ればすぐに正しい方向性を指し示されるようなケースは、速やかに専門医に相談して欲しいと思っています。