食物アレルギーで、食べられる・食べられないの判断がアレルギー検査の値のみで判断されていることが正しくない、とこの場で繰り返しています。
矛盾するようですが、この判断はある意味正しくないのです。
実は、アレルギー検査の数値がクラス2以上が陽性とされ、2以上のお子さんを「食べてはいけない」と指導するのは間違いであることが多いのですが、確かにクラス2、3、4、5、6と数値が上がるにつれて、蕁麻疹などのアレルギー症状が誘発される確率は上がります。
しかも、小学生くらいのある程度の年齢になると、数値の下がりの悪い患者さんは、食べられない確率は結構あります。ですから、数値が高いと食べられない確率はそれなりにあるが、「食べられないもの」と決めつけてはいけない、という言い方が正しいのかもしれません。
「食物負荷試験」を日頃やっていると、クラス0でも症状が出ることがあるし、クラス6でも卵焼きを食べて何ともないなんてこともあります。
アレルギーのプロは、食物アレルギーの治療の基本である「必要最小限の除去」にこだわります。クラス6の子に“卵焼きを食べさせる”なんて無謀なと思うかもしれませんが、食べて何も起きなければ、誰が困るでしょうか?。そもそも「除去」が必要なのは、アレルギーの症状が出て、困るからなのです。
たとえば、地元で食物アレルギーと診断されて、除去を指示されている患者さんのそれなりに多くは当院で診ていますが、全部ではありません。そのひとりひとりを専門的に診察すれば、現在の除去内容をもっと狭くする(食べられるものが増える)ことは間違いないと思います。
「必要最小限の除去」ということを実践するのは専門医であっても難しいのですが、だからと言って指をくわえてみていればいい訳ではないでしょう。親御さんからすれば、1品でも多く食べられればとても嬉しいものだと思います。
先日、食物アレルギーの患者さんが当院を受診されました。卵製品を食べて、症状が出で、近くのこどもの医院さんを受診されたそうです。それまでそれなりに加工品は食べていたのに、それさえも「食べてはいけない」と言われ、医師に不信感を持ったため、当院に相談に来られたそうです。
園に預ける場合、医師の食物アレルギー診断書が必要になります。常々おかしいと思っているのですが、日頃から食事を与えていて、よく分かっているはずのお母さんからの情報よりも、食物アレルギーに詳しくない医師の診断書が優先されています。
このお母さんも、その医師から書かれた診断書に、(卵の微量に入った)食パンだけ食べてよく、それまで食べていた他の加工品は一切ダメと書かれてしまったので、怒りに震えながら、当院を受診されたのです。
話を聞いていて「そりゃ、腹立つわな」と思いました。もし、この医師が患者さんに「必要最小限の除去」をしてあげたいと考えるなら、当院に紹介をすべきなのでしょうが、過去に一度もありません。こういう“方針”は患者さんにとって、望ましいものではないと思うのですが…。
結局、当院で「食物負荷試験」をしてシロクロをつけることになりました。今回のような不信感を持って、医者を替える患者さんは少ないと思われ、食べられていたものまで除去されているケースは、直江津など市内には少なくないと思っています。これを何とかしないといけないと考えています。
私の診ている患者さんで、まだ小さいのに卵の値がクラス4のお子さんがいました。私の場合は、加工品はどんどん食べさせていますので、このお子さんも負荷試験でカステラなど卵の多めに入ったお菓子は食べられることを確認していました。
つい先日、“スクランブルエッグをつかみ、口に入れていた”ところを発見し、大慌てしたそうです。低年齢で、クラス4となると、何らかのアレルギー症状を起こしてもおかしくありません。
しかし、です。何も起きませんでした。これが、いわゆる「誤食」です。私も卵料理までは負荷試験はしておらず、「食べてはいい」とは指導していませんでした。
食物アレルギーを管理する上で、誤食は起き得ます。ただ、この誤食も大きな情報をもたらしてくれます。ガイドラインに書いてあるのですが、大量に“誤食”して何も起きなければ治ったと判断し、制限を解除するのが普通で、微量の誤食の場合は負荷試験をして、解除につとめるようにします。
今回のケースも、スクランブルエッグを少量食べて、何も起きなかったのですが、「卵料理はもう少し待ってください」とした私の指導が間違っていた可能性が出てきた訳です。もちろん、症状が誘発された場合は、除去を継続します。
やはり「転んでもタダでは起きない」という姿勢は重要で、今度卵焼きで負荷試験をやってみることにしました。食べられる可能性が出てきたからです。少量しか食べていないので、多く食べさせた場合には症状が誘発されるかもしれません。でも無駄に除去を続けないためには、チャレンジしてみるしかないのです。
食物アレルギーの診療をしていて、アクシデントはつきものです。せっかくの“チャンス”は活かさないともったいないと思っています。


