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デマ
2011年04月07日 更新

東日本大震災のニュースを毎日みて、心を痛めています。

地震と津波のほかに、原子力発電所からの放射能漏れの対処の目処が立っておらず、農業、畜産、漁業にも深刻な影響を及ぼしています。

私の大学の友人も福島の大学に勤務していますが、メールで連絡を取ってみたところ、無事でしたが、お子さんの発ガンのリスクを恐れ、東海地方の実家の方にお子さんを預けているそうです。しばらくは離れ離れの生活が続くと言っていました。

新潟県は福島の東隣ですが、250キロ以上離れている当院でも、今回の震災の影響と思われる患者さんが受診されています。福島県から避難してきた方、家は関東ですが、まだ赤ちゃんが小さく、水の汚染を心配して避難してきた方、計画停電などの影響を心配してか、出産後長めに当地に残る方などです。

これも大きく報道されましたが、いわき市も風評被害で困っているようです。いわき市は被爆の恐れが強いとのウワサが立ち、全国各地からのトラックに載せられた救援物資がドライバーの拒否により、いわき市より先に届きにくい事態に陥っているそうです。

心ない者がデマを流しているのか、ニュースによると「外国人窃盗団が暗躍している」「強盗や強姦が多発している」「略奪が横行している」など不確かな情報が流れているそうです。確かに電気の復旧は進んでいるのでしょうが、テレビなどから震災前のように溢れる情報を得ることができないでしょうから、まことしやかにウワサされているのでしょう。

政府が「冷静に判断を」と呼びかけていますが、なかなか冷静に判断することは難しいのだと思います。1日も早く、仮設住宅の建設も進み、被災者の方々が少しでも安心して生活できる状況に戻れるように願っています。

さて、デマと言えば、すぐに思いつくのがアトピー性皮膚炎に関してのステロイド軟膏の副作用のことです。そこだけがクローズアップされており、1990年代に一気に広まり、社会問題にもなりましたが、未だに尾を引いています。

先日も、隣町の総合病院の皮膚科に通っても良くならないという赤ちゃんが当院を初診されました。一見してアトピー性皮膚炎なのに、そうは診断されていませんでした。いつも言っているように、過小診断・過小治療で良くなっていなかったのです。

アトピー性皮膚炎のガイドラインを示し、アトピーと診断されること、ステロイド軟膏で治療することが正しいとされていることなど注意点も含め、時間をかけて説明しました。

当院には最近は市内、市外からこういった赤ちゃんが毎日のように受診されています。医学はそれなりに進歩していますから、適切な治療をすれば改善は早いのです。当院ですとだいたい1週間後に再診して頂いていますが、95%以上は著明に改善しています。先日の入院した方がよいと思ったと書いた超重症の患者さんも劇的に改善しています。

先々週くらいに受診した患者さんにも、いつも通りに説明し、いつものように1週間後に受診して頂いたら、あまり改善はありませんでした。ほとんどが良くなるのに、良くなっていなければその原因を探らなければなりません。

ステロイド軟膏の減り具合を聞いたら、答えが分かりました。あまり塗っていないに等しい程度にしか塗っていなかったからです。もう一度指導し直して、再診して頂いたら、私の頭の中でイメージしたくらいに良くなっていました。親御さんはステロイドに悪いイメージを持たれていて、それが治療の妨げになっていたようです。

以前に比べればかなり減ってはいますが、ステロイドに漠然とした不安を持っている方は少なくありません。このデマを払拭する努力をしています。具体的には、悪化した状態で受診した患者さんにしっかり指導して塗って頂くと、短期間で皮疹自体とかゆみ、それに伴う睡眠障害などが一気に軽減します。「ステロイドを敵と見るのでなく、困った時に助けを求める味方という見方もできるのではないか?」と言っています。

そうやって地道にデマを遠ざけようとしているのですが、同業者には「2~3日以上使ってはいけない」と正しくない指導を繰り返している医師もおり、困っています。

医学は根拠のあることをやるべきと言われており、各医師の経験や勘に頼るのは正しいこともあるでしょうが、間違っていることもあります。先日、当院で診ている患者さんが熱が出て、看てくれる人がいないと言うことで他の医院さんを受診したそうです。

風邪と診断されたそうですが、熱が下がらず翌日も受診したら、今度はマイコプラズマといわれ、抗生剤の点滴をされたそうです。「点滴をしないと治らない」と言われたそうです。以前、私がマイコプラズマの検査は信頼度が低いと言っているのを覚えていて、検査結果を見せて下さいと言ったら、「ない」と言われたそうです。検査をせずにマイコプラズマと診断しているのでしょうか?。

当院は、呼吸器にもこだわっており、私の知っている限りでは、マイコプラズマを早期に診断する的確な方法はないと思います。臨床症状からある程度、予測をつけるのですが、内服の抗生剤を使えばかなり有効です。申し訳ないですが「点滴をしないと治らない」という根拠はないと思います。マイコプラズマは重い場合は肺炎に至りますから、入院加療が必要になりますが、それ以外は、当院は開院して3年半、マイコプラズマで点滴した患者さんは1人もいません。

小児科医は弱い子どもを相手にしているので、子どもの嫌がる痛い治療はなるべく避けるべきだと考えており、実際、点滴はしなくても治療できます。点滴をした方が医院の利益が上がることは分かっていますが、そうしないのが小児科のプロだと思っています。それに、私は小児科医を20年ほどやっていますが、マイコプラズマを「点滴しなければ治らない」と聞いたことは一度もありません。

結局のところ、「点滴をしないと治らない」というのはデマの一種と言えると思います。この患者さんは納得いかず、忙しい中、時間を作って当院を頼って受診されました。診察した結果、臨床的にはマイコプラズマではなく、何らかのウィルス感染(いわゆる風邪の一種)と考えていますし、高熱が続き、水分もなかなか摂れないようなら脱水になっており、点滴が必要になりますが、このお子さんは元気で水分も摂れて、おしっこも十分出ており、点滴すら必要ないと判断しました。これらを説明し、デマを解消する努力をしました。

ウィルス感染に抗生剤の点滴を繰り返す医院さんもありますが、実はウィルスには抗生剤は効かないのです。点滴を繰り返しているうちに、自然に治っているだけで、抗生剤が効いたように見えているだけと思われます。患者さんは抗生剤が効いたと思い込んでおり、私から言わせれば気の毒なことだと思っています。患者さんも点滴すれば治ると思い込んでいるところがあり、それもある種、デマと言えると思います。

アトピーに対するステロイドもそうですが、こう言った小児科の基本であるウィルス感染の対処についてもデマはありそうで、結局患者さんの不利益につながります。当院は、それを減らす努力を続けていかなければならないと思っています。