23日の午後は中越地方まで出かけ、養護教諭の先生方に子どものアレルギーについて講演の予定になっています。
学校もきっと様々な問題を抱えており、先生方も大変だろうと思っています。その上に増え続けるアレルギー児への適切な対応が求められています。専門的な知識も求められるので、本当に大変だと思います。
先日、モンスターペアレントと学校側の対決が話題になり、訴訟になったそうです。中には本当にモンスターもいるのでしょうが、アレルギーで重篤な症状をきたした時に、学校側の対応に落ち度があれば、大きなトラブルになりかねません。アレルギーで最も問題になるのは、アナフィラキシーショックだと思います。
文字通り、ショック状態になるので最悪命を落とすことも起こり得ます。一般論として、アナフィラキシーショックの場合、30分以内に適切な処置が求められます。アナフィラキシーショックで命を落としたケースでは、ほとんどがショック改善薬の対応が30分以内に行われていなかった、という報告があります。
食物アレルギーが重症で、アナフィラキシーもしくはアナフィラキシーショックを経験しているお子さんは、「エピペン」という自己注射薬が処方されるべきです。ただ、新潟県はいつも言っているように、食物アレルギーの専門医がほとんどいないため、予想するにエピペンが必要な患者さんにも処方されていないケースも少なくないと思っています。
エピペンが処方されていない場合は、万が一学校でショック状態になれば、学校側が適切に判断し、速やかに病院へ救急搬送が求められます。一方、エピペンが処方されている場合でも、早急に病院へ搬送できる状態であれば良いのですが、病院到着まで30分以上かかる状況では、何とかしなければなりません。
エピペンは、基本的には本人と家族がショック時に接種することになっています。しかし、本人が小さかったり、ぐったりしている場合は、自分で注射が打てるはずはありません。最近、救急救命士が打てることになりましたが、発症してから30分以内に接種できない状況も充分有り得ます。
目の前にアナフィラキシーショックにより、ぐったりしている子どもがいて、手元にエピペンがある場合、近くに学校の先生しかいない場合は、その状況を救えるのは学校の先生だけになります。都会であれば、救急車はすぐに来るでしょうが、距離が離れていたり、大雪や渋滞で道路状況が悪い時は時間がかかります。もしかしたら、地方の方が、学校の先生が対応しなければならない状況が多いのかもしれません。
常識で考えると、エピペンの注射を行うことは“医療行為”に当たると思われます。しかし、目の前に重篤な症状のお子さんがいて、何もしないのは人道上問題だと考えられています。解釈としては、医療的な行為を“継続的に行う”ことが医療行為であって、とっさの時に行うのは医療行為に当たらないと判断するのだそうです。実際、昨年だったでしょうか、学校で誤食でアナフィラキシーを起こしたケースで、学校側がエピペンを使用しなかったと批判的な論調でニュースが流れたこともありました。
児童、生徒がアナフィラキシーショックに陥り、エピペンが手元にあり、本人が打てず、親も救急隊もすぐには到着でいない状態では、学校の先生がエピペンの注射を行うことが求められています。それに関して、起きた不慮のアクシデントへの責任は問われないことになっているようです。
実は、食物アレルギーの患者さんがアナフィラキシーを起こした場合、専門でない医師は大抵ステロイドの点滴を治療として選択する傾向にあります。食物アレルギーのアナフィラキシーにアドレナリン(エピペンの成分)の注射を使用したことのない小児科医は大勢いると思います。医師でも判断が難しいものを、学校の先生に求めるのは酷と言えると思いますが、意識がないような超重症な場合は、救命のために注射をして頂く必要があります。滅多に遭遇しないケースなのだと思いますが、いざという時のためにエピペンの使い方を学んでおいて頂きたいと思っています。
23日の講演で、養護の先生が最も注目していることが、このエピペンの使い方だろうと思っています。動画も含め、アレルギーを持つ子どものために、もしもの時に備え、充分に理解して頂けるように解説しようと思っています。
ちなみにこのエピペンは、これだけ学校の先生方には注目されていますが、小児科医の間ではあまり注目されていません。それは食物アレルギーの専門医が少ないことにも起因しています。医師もエピペンを処方するためには、使用法の研修を受けていなければ、処方する権利がもらえないのです。アナフィラキシーを起こしたからと言って、近くの小児科で処方してもらえない確率が高いのです。私の知る範囲では、近隣で開業医で処方できるのは、当院だけと思います。
エピペンは、「アレルギー科」の必須アイテムだと思っていますので、「アレルギー科」を名乗るのなら、「エピペンは処方できません」では患者さんに申し訳ないと思います。ただ、大した説明もなく無責任は処方は困ります。
これは実際にあった話ですが、学校でアナフィラキシーを起こしているのに、原因がアレルギー検査のみで判断されていました。しかも、普段食べて何も起きない食品です。原因が特定されない場合でも、重度の症状の時はエピペンを処方すべきなのに、それもなされていませんでした。当院への相談も一切なし。ちょっと、呆れてしまいました。その後、当院に来られ、原因を特定し、エピペンも処方してます。
食物アレルギーは、乳幼児に多い病気で、小学校以降では頻度は減りますが、重い患者さんが治らずにいるという印象があります。決して甘く見るべきではないでしょう。養護の先生が関心を持つように、本来はプロである、小児科医がもっと専門的知識を持つべきだと思っています。
いつものことながら、23日の講演は直前になってスライドを作っています。学校の先生の間で口コミで広がっているようで、先日も別の中越の市からも講演の依頼がありました。私自身は、新潟県のためになるのであれば、どこにでも行くつもりです。声をかけて頂ければ、対応させて頂きたいと思っています。


