先日、ゼーゼーを繰り返しているというお子さんが当院を初めて受診されました。
某医院さんに何度も通院していて、風邪とかマイコプラズマと言われていたそうです。ずっとその医師の言うことを信じて通院されてきたそうですが、あまりにおかしいと感じはじめたところ、知人から当院の話を聞いて受診されたのです。
ゼーゼーを繰り返せば、素人でもぜんそくを思い浮かべると思います。診断が風邪だったり、マイコプラズマだったりとバラついているものの、何故か「ぜんそくではない」と明言されていたそうです。素人が分かるようなことを、診断できないのも問題がありますし、意図的にやっているのなら、それも大きな問題でしょう。
医療の世界は、医師の良心に左右されます。入ったことのないラーメン屋に入る時は「ここの店って美味しいのかな?」という気持ちを持つと思います。美味しくなければ「もう来たくない」、美味しければ「また来よう」と思うことでしょう。最初にちょっと疑ってかかっているところがあると思うのです。
ところが、医療機関に関しては、どこへ行っても良心的に診療してもらえるものという“思い込み”があるように思っています。まず「信頼ありき」なんだと思います。ところが、開業してみて、各医院の医療内容に大きな差があることに気付きました。
どうみてもぜんそくなのに、風邪とか気管支炎と診断されていたり、アトピー性皮膚炎を乳児湿疹、乾燥肌と診断されている患者さんが多いのには、最初は「医者なのに何で診断できないのだろう?」と思っていましたが、最近はもう慣れました。
感染症の分野でも、例えば私の場合、熱が3日くらい続くと血液検査をさせて頂き、CRPという炎症反応をみるのですが、高ければ細菌感染のことが多く、低ければウィルスの仕業と言えると思います。ですから、当院では熱が続いても、CRPが低くて細菌感染の可能性がまずないと思えば、抗生剤は使っていません。ところが、抗生剤の点滴を繰り返している施設もあるようです。
ウィルス感染には抗生剤が効かないのは医師の間では常識ですが、世の中にはいろんな医師がいるのです。全ての医師が良心的に医療をやっている訳ではないと感じています。親御さんは、お子さんが正しい適切な医療を行われているかどうかチェックする必要があります。先程のラーメン屋の話じゃないですが、多少は医師の腕を疑ってかかった方がいいのかもしれません。
冒頭の患者さんは、ゼーゼーを繰り返しておりましたので、ぜんそくであることは明らかでした。この患者さんも短期間に何度もマイコプラズマと言われ、その度に点滴を繰り返されてきたそうです。地元では突出してマイコプラズマの診断が多い医療機関が存在するのですが、私の目から見ても不思議でなりません。そう何度も繰り返すものではないし、内服薬でも充分効果があるので、当院ではマイコプラズマに点滴治療は行っていません。医師の見解に、どうしてこんな差が出てしまうのでしょうか?。
お子さんがぜんそくであると説明した時に、お母さんが「私も咳が止まらず、子どもの時は苦しい思いをしました。もしや私もぜんそくではないですか?。」と言われました。話を聞いてみると、お母さんがまだ子どもの頃に、同じ小児科にかかっていたのだそうです。
実は、お母さんも子どもの頃にゼーゼーを繰り返していたそうです。そう、お母さんもぜんそくと診断されるのです。親の体質は子どもに遺伝しやすいので、そういう点からも、お子さんのぜんそくという診断は裏付けられることでしょう。
同じところにかかっていたため、親子二代に渡って、同じ対応がなされていました。敢えて言えば誤った診断により、適切でない治療が親子二代に渡り繰り返されていたのです。さすがの私も驚きました。医師の診断能力が20年くらい前から変わっていないとも言えるからです。
10年程前に小児ぜんそくのガイドラインが作成されました。それ以前は、診断できなくても仕方ない部分はありますが、現在になっても典型例を診断できなければ、アレルギー科を名乗ることは許されないはずです。意図的に診断を避けているのかもしれないとすら感じます。
いずれにしても、ぜんそくはキチンと診断し、適切な治療をすることで「治る」と言う方向に向かうことができます。そうしなければ、発作の出やすいクセがついてしまうことにつながります。
ぜんそくという病気を説明すればする程、お母さんは自身が子どもの頃からの長い歴史が正しくなかったことに気付かされ、あまりの衝撃に何とも言いようのない表情を浮かべていらっしゃいました。信頼してきたのに、裏切られたという思いは強いでしょう。
親子二代ともなると、その医院一筋という感じですが、患者さんの期待とは裏腹にこんなこともあるのです。ですから、医療は一施設だけに通い続けることは、場合によっては危険とも言えます。何度も通っても症状が改善しない、やたらと点滴が多いなどの場合は、別の医療機関に相談してみることも自分のお子さんを守るために、必要なのだろうと思っています。


