土曜は、現在行われているサッカーのワールドカップの日本、オランダ戦をご覧になった方も多いと思います。
ルールの中で、フェアプレー精神で国の代表がプライドとプライドのぶつかり合う様子を見ていると、本当に気持ちいいと思っています。
RSウィルスについて、冬場に何度も触れました。恐い病気にもかかわらず、上越では患者さんの間でRSウィルスの知名度が極めて低いのです。2歳以下が重症化しやすく、インフルエンザのタミフルのように特効薬がないため、2歳以下の子を持つ親ほど知っておかなければならない病気だと言われています。6割程度しか知らないというデータもあるようですが、上越では私の印象では2割以下だと思います。
開業医が外来で調べると検査費用が患者さんから請求できないため、あいにくキチンと調べる開業医はほとんどいません。最近は各医院が周囲で何が流行っているかという感染症情報をホームページなどで紹介しています。いくつかを見ても、RSウィルスのことすら触れられていない場合もあります。
他の感染症は的確に診断されているところをみると、特に重症化した場合はRSウィルスを診断できない小児科医はまずいないと思いますので、RSウィルスのことを触れていないのは、検査費用を請求できないことと無関係ではないと思っています。
生後半年以内の赤ちゃんは、お母さんのへその緒からもらった免疫があるため、感染症にかかりにくいのは、親御さんでもご存知の方が多いと思います。しかし、RSウィルスはその免疫が全く効かず、生まれてまもない赤ちゃんでも感染してしまいます。実際、今シーズンは生後1か月や2ヶ月でも何人も感染の確認をしています。
RSウィルスは、インフルエンザ並み、もしくはそれ以上に恐い病気だと思っています。インフルエンザは高熱が出るため、熱性けいれんを起こしやすく、けいれんが長引くとインフルエンザ脳症のことが頭をよぎり、病院に紹介して精査と治療をお願いしています。この冬から春にかけて5人くらいは入院をお願いしたでしょうか。一方、RSウィルスで熱が続き、呼吸困難で入院を要した患者さんは20人以上に上ると思います。インフルエンザのように脳症は起こしにくいように思いますが、入院するくらい重症化するという意味では、“恐い病気”という表現がご理解頂けると思います。
RSウィルスにかかると、その後10年以上もかからなかった子どもに比べるとゼーゼーしやすくなるという報告もあります。一度かかって10年も影響を及ぼす感染症なんてそうあるものではありません。10年以上も咳が長引きやすくなるのなら、かかりつけの患者さんのことを考えると、私は自腹を切ってでも調べるべきだと思っています。これは医師としてのプライドの見せどころだと思います。しかし、ほとんどの開業医は調べていないのは事実でしょう。
上越でのRSウィルスの認知度は2割以下ではないかと言いましたが、私が力説し、先日もテレビで取り上げられた「食物負荷試験」となると、ほとんどの患者さんが知りません。当院が開院して2年半になりますが、わずかに知名度が上がってきている程度です。
私がアレルギー専門だから気になることなのかもしれませんが、たいていの小児科が「アレルギー科」を標榜しており、かかりつけの患者さんからは当院と同じような専門的な医療を期待されていると思うのです。もちろん、RSウィルスや「食物負荷試験」にも詳しいものと患者さんは期待していると思うのです。
残念ながら、子ども達の健康がかかっている割に、かかりつけ医と信頼を寄せられていながら、これらの情報が“封印”されている現状は、問題があるのではないかと思います。悪く言えば、社会主義の某国のように、都合の悪いことは伏せるような“情報操作”がなされているように感じています。
日本の第一人者の先生方が、困っている患者さん達にもプロ並みの医療を受けられるようにとぜんそくやアトピー性皮膚炎などのガイドラインが作成されましたが、少なくとも当院を頼って受診される患者さんの過去の治療をみると、“我流”がまかり通っています。敢えて言いますが、同じことを繰り返している医師もいます。私も含め、もっと努力すべきだと思うのです。
繰り返しになりますが、ワールドカップを見ても、“フェアプレー”は大切だと思います。サッカーの場合は、不正な行為があればファウルやペナルティが与えられます。ただし、医療の世界では、“フェア”でなくても、“ファウル”も“イエローカード”も“レッドカード”もないのです。医療の世界は、医師の良心に全面的に委ねられているのが現状でしょう。医療こそが、フェアプレーが求められていると思っています。


